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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十四話 撤退命令
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圧迫しつつあります」
「総司令部より命令! 攻撃せよ! 攻撃せよ! 攻撃せよ!」

その通りだ。今こそ攻撃すべきときだ。
「全艦に命令! 攻撃せよ! 攻撃せよ! 攻撃せよ!」
「はっ」

敵は全線で押されつつある。もう一歩で崩壊するだろう。今一押しだ。
「敵右翼潰走します」
「敵中央部、左翼後退しつつあり」
「閣下。追いますか、それとも中央部を攻撃しますか」
「全艦に命令、敵中央部を側面より攻撃せよ」
「はっ」

勝敗は決した。あとは追撃を行い戦果の拡大を図ればいい。
「総司令部より命令! これは」
「ん、どうした」
「はっ、つ、追撃を中止し、撤収せよとのことです」
「馬鹿な! 総司令部は何を考えている! 千載一遇の機会ではないか! 気でも狂ったか! 」

俺は思わず、提督席から立ち上がった。何を考えている、ミュッケンベルガー、貴様の望む艦隊決戦、その勝利を何故捨てる!
「閣下、落ち着いてください」
「何を落ち着けというのだ、ケスラー」
「味方は攻撃を打ち切りつつあります。このままでは我が艦隊は敵中で孤立します」
「……攻撃中止、撤収せよ」
俺は床を蹴りつけた。



■帝国軍総旗艦ヴィルヘルミナ ラインハルト・フォン・ミューゼル

 会戦は中途半端な形で終結した。敵右翼には損害を与えたが、左翼、中央部は戦線を維持したまま後退に成功。決定的な勝利を収めるには行かなかった。会戦終了後、総旗艦ヴィルヘルミナで将官会議が開かれる事になった。俺は憤懣を胸に秘め会議室へ向かった。

「ご苦労である。此度の攻撃停止命令、皆納得のいかぬことであったと思う。良く我が指揮に従ってくれた。礼を言う」
ミュッケンベルガーの顔色は暗い。後悔しているのか? 妙なのはシュターデンだ。妙に興奮しているように見えるが、どういうことだ?

「我々は軍人です。上官に従う義務があります、しかし、何故攻撃停止命令を出されたか、其の訳をお話ください」
俺のような若造が口を出すべきではないのは判っている。それでも俺はミュッケンベルガーに言わざるを得ない。勝っていたのだ。

「帝都オーディンより撤退命令が出た」
「!」
周囲がざわめく。撤退命令? どういうことだ、誰が出した? シュタインホフ? それともエーレンベルクか?

「皇帝陛下不予、遠征軍は至急撤退せよとのことだ」
ミュッケンベルガーの声は重く暗い声だった。部屋が凍りつく。皇帝陛下不予! フリードリヒ四世が死に瀕しているのか、あの男が。
「残念では有るが、帝都オーディンへ向け撤退する」
「はっ」

「ミューゼル中将、卿が殿を務めよ。敵は今回の戦いに不満を持っていよう。我等が撤退すると知れば追撃してくる可能性が高い。くれぐれも油断するな」
「はっ」

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