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黒を纏う聖堂騎士団員
27.母の想い
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人の行動原理は全て自己満足なのよ。
私がクロノスを手放したのもそう。
あの宗教にいたら殺されてしまうから。
あの時、生まれた子を殺す勇気なんて私にはなかったわ。
だから捨てたの。手放したの。
死ぬかもしれないのに、手放したの・・・
わがままで身勝手な私のせい。
死を酔拝するより大事なものを見つけたのよ」

「私にそんな母などいなかった。
いたら私を捨て勝手に死を選ばないだろうな。」

「・・・ならあなたに子がいたら?」

「なるほど。
法皇暗殺の指名手配犯の私などいない方が子供のためだな。
死を選ぶだろうな。
言われてみれば母が生きていたら、私を養子に取る話などあがりもしなかったな。」

「そう・・・・・・

宗教内でエリスを持つ子がマイエラにいると知らせが入り、それを殺す役を決めていたの。
これも私の身勝手な考え。
私以外の誰にもクロノスを殺させたくはなかったのよ。
だから来たの。助ける気はなかったわ。
追手から逃げるぐらいなら死なせたい。
他の信者より先に、ね。
でもあなたみたいな人がいるなら託せばよかったわ。
ごめんなさい、私が悪いの。」

マルチェロは理解できませんでした。
母がいないせいか、子へ対する考え方が理解できないのです。
ただ、自分は母に想われていたのかもしれないと思うとマルチェロは、なんだか今までを申し訳なく感じるのです。

「マルチェロ・・・これが私にできる償いよ。
エリスを封印するにはクロノスの封印魔法を外した際の全ての魔力がいるわ。
でも今、それはない。」

そういうとマルチェロの耳元で何かを囁きました。
消え入りそうなか細い声で。
しっかり聞いたマルチェロは、はっきり女に話しました。

「マダム、活用します。
代わりに条件があります。よろしいですか」

「・・・・・・」

「この世界がこれからどうなろうと、自ら死ぬことだけはお止めください。
クロノスが小さな頃から見てきました。
男と混ざる生活から少し女性の思考には弱い面がありますが、
優しい子というのは事実です。
そんなクロノスがあなたが死ぬことを喜んだりなど・・・しない。」

それを聞いた女は涙を流しながら頷きました。


はやぶさの剣を握るかつての聖堂騎士団員、戦場に立つ。
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