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ほね・骨 ・Bone!!〜【30万人の骸骨が、異世界に移住した結果がこの有様だよ!】
11話 祖国戦争  序戦 -7「死すべき鉄の罠」
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という間に血ダルマにする。
さすがに膨大な人間が突撃したから、木の杭の幾つかは倒れた。だが何重にも展開された有刺鉄線は障害物として機能し続け、次々と人間達をズタズタに切り裂く。
前進ができない以上、今までの犠牲は全て無意味と化す。
集団の持つ前進するエネルギーはここで完全に『殺されてしまった』

(こんなのってっ……!こんなのってありかよぉっ……!)

全身が血ダルマで倒れ伏したピザーラ。激痛を感じながら次々と有刺鉄線の犠牲になっていく友軍を見る。
後続が前の兵士を押し、その犠牲がどんどん拡大。
有刺鉄線のせいで、誰も前に進めなかった。頑張って捨て身の覚悟で杭を倒しても、トゲトゲの針金が障害物として現場に残り続けるから、犠牲者を量産するだけである。
仰向けに無気力に寝転がったピザーラは、細長い塔を見上げる。
そこに眼窩を真っ赤に光らせる大きな骸骨(ワルキュラ)がいた。全てを死へとおいやるような絶望のオーラを身にまとう大魔王。少年にはそう見えた。

(間違いない邪神だっ……!
あいつっ……!俺達が無残に死ぬさまを鑑賞してやがるっ……!
俺は一体、どこから道を踏み外したんだっ……!?)

全身から血が溢れる……こんな所で死にたくない。
まだ、何も出来てないのに死ぬのは嫌だ。
故郷に戻って全てやり直すんだ。
都会に出たけど、俺には何も残らなかった。

(邪神でも良いっ……俺を助けてくれっ……。
俺は俺はっ……まだ、やりたい事がたくさんあるんだっ……。
幸せにしないといけない女がいるんだっ……。
まだ童貞なんだよっ……)

田舎の人間が都会に出ても、コネがないから重労働で低賃金で危ない仕事しかなかった。
市民権を得る事もできず、結婚もできない。
成り上がれるチャンスだと思って、軍に志願したがそこに待っていたのも不自由で辛い生活。
まだ、労働の報酬を受け取っていない。

(母さん、父さん……。
俺が悪かったよっ……夢じゃ飯は食えなかったよっ……
家出したのは謝るから……家に帰りたいっ……)

少年にとって幸運な要素があるとすれば、『故郷』に帰っても居場所なんてない。
幼馴染の女の子は、地主の息子と結婚して幸せな家庭を築いているから、ピザーラの存在そのものが邪魔だ。
男の帰りを待ち続ける女なんて、そう滅多にいるもんじゃない。

「人間どもを殺せぇー!」

そのデューの声とともに、有刺鉄線の向こう側にいるデュラハン達が次々と矢の雨を降らせた。
それがピザーラの人生最後に見た景色。

ここで死んだ皆も、似たような思いを抱いて、この世から旅たった。
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