第五十四話 所詮は帽子の羽飾り
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ばどうなるか、今度はルビンスキー自身が自らの命で代償を払う事になる」
少将は無言、そして宰相閣下も無言。少しの間沈黙が落ちた。居心地が悪い。でもそう思っているのは私と准将だけの様だ。閣下も少将も自然体で寛いでいる。
「艦隊の方は如何です。十分に練度は上がりましたか?」
「はい。後は実戦を待つだけです」
オーベルシュタイン少将の答に宰相閣下がにこやかに頷いた。
「楽しみにしていますよ、少将」
宰相閣下が少将の肩に軽く手をかけて立ち去った。私と准将が後を追う、少将はまた一人になった。
帝国暦 489年 4月 13日 オーディン 帝国宰相府 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
世の中には書類というものが無くなる事は無い。理由は簡単、お馬鹿な官僚達が自分は仕事をしていますと証明するためにやたらと報告書を書くからだ。そしてその表紙に“部外秘”、“極秘”、“最高機密”などと訳の分からんスタンプを押して自己満足を満喫する。迷惑な話だ。おかげで書類とそれをしまう書庫は可笑しいくらい増殖する。兵站統括部の物置部屋が良い例だ。
幸い俺は書類を読むのを苦にはしない。パーティで浮かべたくもない笑顔を浮かべながら談笑するくらいなら書類の山に埋もれている方が好きだ。俺の仕事を手伝っているヴァレリーとヒルダだが俺への報告書を選別する仕事も行っている。読むに値する書類、値しない書類。今のところ不都合は感じていない。まあヒルダは原作でも同じ事をしているからな。ヴァレリーは長い付き合いだ。軍で同じ仕事をして慣れている。
そして今日も俺は二人が選別した書類を読んでいる。楽しい一日だ。だがその楽しい一日をヒルダが破った。昨日パーティで疲れているんだ、少しは察しろよ。
「閣下、宮内尚書ベルンハイム男爵が至急お会いしたいとの事ですが」
「……分かりました。待っていると伝えてください」
宮内尚書が至急会いたい? 何だろうな、心当たりが無い。昔は宮内省は重要官庁だった。宮内尚書が至急会いたいと言って来たら重大事件発生と同義語だ。何と言っても皇帝一家の生活の管理、それに愛人達の管理もしていた。愛人達の勢力争いや妊娠騒動、皇族達のスキャンダルの揉消し、神経を使う問題は多かった筈だ。パーティ等の運営も宮内省だったな。大貴族達の顔を潰さないように行うのは大変だったろう。だが今は違う。今の宮内省はそれほど重要な官庁とは言えない。
何と言っても皇帝は未だ幼児だ。皇妃もいなければ愛人もいない。女性問題は起こしようがない。おまけに大貴族達は俺が潰してしまった。宮内省が気を使わなければならない貴族は例の子爵夫人達だけだがそれは俺に任せておけば良い。暇な筈だ。
宮中の官女達も整理した。人件費が馬鹿にならないんだ。若くて美人なのは退職金を与えて追っ
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