第五十四話 所詮は帽子の羽飾り
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起きたら遠慮なく言って下さい。何時でも相談に乗ります。シュトライト准将、アンスバッハ准将、宜しいですね」
宰相閣下が声をかけると子爵夫人達の傍にいた二人の准将が一礼し子爵夫人達が“重ね重ねのお気遣い、有難うございます”と答えた。
宰相閣下は両子爵夫人に気遣っている。政治的な配慮では有るがその配慮に偽りはない。そのためだろう、両夫人の宰相閣下を見る目は優しい。そして私を見る目は冷たい。宰相閣下は敵だった。だが今では手を取り合う関係だ。マリーンドルフ家は敵ではなかった。しかし味方でもなかった。マリーンドルフ家は裏切り者だ。信用は出来ない、そう思っているのだろう。そしてそれは貴族達の殆どがそう思っている事だ。
「グリューネワルト伯爵夫人の事、残念な事でございました。お悔やみ申し上げます」
「御胸中、お察し致します」
両子爵夫人が伯爵夫人の事で宰相閣下を労わった。閣下が微かに寂しそうな笑顔を見せ、“お気遣い、有難うございます”と言った。そしてパーティを楽しんでくれと言って丁重に礼をしてテーブルを離れた。ここまで約十五分、十分な時間だろう。誰もがシュテルンビルト子爵家、ノルトリヒト子爵家に敬意を払うに違いない。
閣下がテーブルを廻る。参列者に挨拶をし軽く会話をして別れる。そうやって幾つものテーブルを廻った。私とフイッツシモンズ准将はその後を付いていく。一人の士官がポツンと立っていた。周囲には誰も居ない。血色が悪く白髪の多い髪。パウル・フォン・オーベルシュタイン少将。宰相閣下の艦隊の分艦隊司令官をしている人物だ。閣下が傍に寄った。
「オーベルシュタイン少将、楽しんでいますか?」
「はい」
クスクスと閣下が笑った。
「嘘はいけませんね。本当は詰まらないのでしょう」
「正直に言いますとその通りです」
宰相閣下が更に笑う。本当に楽しそうだ。気を遣わずに済む相手なのかもしれない。
「フェザーンの件、如何思います?」
「……」
少将が私と准将を見ている。
「心配いりません。彼女達は全てを知っています」
「……なるほど。ではやはりあれは閣下の御指示ですか。……小官は宜しいかと思います。フェザーンに対して十分な警告になるでしょう」
抑揚の無い声。本当に賛意を表しているとは思えない口調だが宰相閣下は気にする様子も無い。
「少将にそう言って貰えると嬉しいですね。及第点を取れたかな」
「……」
少将は返事をしなかった。そして宰相閣下も気にする事無く話し続けた。
「フェザーンには常に武力を示そうと思います。あそこは軍事力が無い、だからこそ武断的に対処する。その方が脅しとして効果が有る。そうは思いませんか?」
「同意します。しかし反発は有るでしょう。閣下の御命を狙うかもしれません」
「成功すれば良いですね。万一失敗すれ
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