既死廻生のクレデンダ 後編
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に設置してある収納器具らしきものは、驚くべきことに古代生物である『植物』の死骸を原材料に作成されているようだ。現代では天然素材と呼ばれ、戦争開始前のミランダが独占していた素材だ。戦争の開始から間もなく観賞用を除く天然素材は完全に枯渇したと聞いている。
自分で確認するのは効率が悪いな、と思った。
OTが停止しているのならば1000号に情報を拾わせればいい。
擦れた声で、1000号を呼ぶ。
「1000号、応答しろ」
1000号に命令を送る時、『彼』はいつも肉声での意思伝達を行う。思考が直接伝わるインプラントAIに対して、効率の悪いコミュニケーション手段。だが、自我のある彼は敢えてそれを好んだ。
「1000号……?おい、1000号………ッ!?」
そこに到って、『彼』は遅ればせながら、意識を失う前の出来事を思い出した。
禁忌保管庫から盗み出したデータ。
記憶を量子化しての、別概念世界への存在シフト。
そして、1000号は――1000号は、一緒に空を見ると約束したあいつはどうなった。
肉体を起こそうとして、身体がひどく弱弱しく変貌していることに気付く。クレデンダのそれとしては考えられないほど、余りにも痩せ細った体。体内循環ナノマシンによって一定に保たれている筈の筋肉が著しく減退している。が、今はそれを考える時間すら惜しい。1000号を、『彼』の一部にして半身の存在を、探さなければならない。
「ぐ、う……1000号!1000号!?どこにいる、1000号ッ!!」
痛む頭を抱えながら、必死で膜電位の流れを探る。いるのなら、ある筈だ。膜電位からエネルギーを補給して、二つ返事する筈だ。
今置かれている状況など、そんなことはどうでもいいことだ。
今は自分という存在があるかないか、そのような次元のものを探している。
1000号を探しているのだ。インプラントAIで、いつも一緒で、機械知性体で、大切なんだ。
「俺の命令を無視したのか、1000号!規定違反だ!定期メンテナンスに提出する必要がある!!」
何故返事しない。何故膜電位の流れに引っかかりがない。どこに――どこに――!
一緒に来れなかったなどと、そんなことを言うつもりか。
認められない。
命令だ、返事をしろ。
『俺』を、置いていくな。
「応答しろと、言ってるんだ………応答しろッ!1000号ぉぉぉーーーーッ!!!」
この感情が何なのか、物知りのお前は知っている筈だろう。
視界が滲む。生理的な、不純物排除用の洗浄体液が、こちらのコントロールを離れて勝手に放出されていく。これも感情なのか。感情の意味を知りたいのに、相変わらず1000号は応答しない。
教えてくれ、1000号。教えてくれ。お前がいな
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