既死廻生のクレデンダ 後編
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不意に。
『彼』の意識は、嗅ぎ慣れない有機物の刺激によって覚醒した。
(コンディションチェック………)
意識の覚醒と同時にコンディションのチェックを行い、駆動体に問題がないかを確かめる。
クレデンダが行う、言うならば「朝の日課」とも言える自己診断プログラムをOT経由で走らせようとした『彼』は、そこで、OTが休止状態にあることに気付く。
どうやら損耗があまりに激しかったためにコクーンを展開してしまったらしい。
コクーンはOTの自己防衛と自己再生、及び敵からの干渉を防ぐ概念障壁だ。高次元干渉をジャミングしつつ物理的干渉も防ぐ複合位相障壁で自身を球体のように覆い、内部では自機の永久機関『離元炉』、バッテリー、及びナノマシン・セルの生成の3機能だけを稼働させる。
離元炉は破損しているが、コクーンはそれ自体が高次元内の無と有が混合した空間からエネルギーを抽出する機能を持つ。エネルギーがあってプログラムそのものが無事ならば、時間をかければいつかは完全に機能を修復できる。
万全の状態ならばOTは持ち主を超高熱量兵器級の危機から守り、慣性を無視した飛行や馬力を見せつけ、あらゆる環境での稼働を可能にし、更には武器を持たずとも銃撃や接近戦を行える。高次元の干渉という、ミランダの辿り着けなかった技術があるために可能となったことだ。
ただ、扱う人間が脆い有機物であるため、それを防衛することで物質的負荷がかかる。だからこそ最終的にはミランダの物量に押されることになった。
それならば人間を機械化すればよかったのではないか、と疑問に思ったが、クレデンダは人間を「理性的で効率を求める生物種」と定義していたために生身を失うことを忌避していたようだ。
逆に、人間を「感情や自由を貴ぶ意志ある存在」と定義していたミランダは、肉体がどうなろうと意志があればよいと考えていたためにサイボーグ化に抵抗が無かった。
人の意志を無視しながらも「人」であることに拘ったクレデンダと、意志さえあれば肉体を捨てても構わないと考えたミランダ。これではどちらが人間なのか分かったものではない。
しかし、OTの機能が停止している以上、五感を用いて状況を確認するしかない。
ふと見ると、腕になにか医療用注射針のようなものが差し込まれていた。信じられないくらい旧式の薬物投与機だ。ミランダでは未だに使っている地域もあるらしい。静脈にそれを通して液体が投与されていたが、邪魔なので引き抜いた。
周辺を見る。驚くほど原始的な寝具の上に寝かされていた。何の合理的機能もなく、ただ分厚い布とバネだけで寝者の負担を申し訳程度に和らげるだけのものだ。布は、未確認の素材で作られている。
周囲を見渡すと、部屋らしき四角い空間の中にいた。内部
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