3部分:第三章
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第三章
そんな彼であった。しかし野球になるとだった。
朝職場でスポーツ新聞を見てだ。いきなり言うのであった。
「よし、城島やってくれたな」
「昨日打ったんですよね」
「それで勝った。いいことだ」
その端整な顔を頬笑まさせての言葉だった。
「やっぱり阪神は勝たないとな」
「そうですね。本当に」
「じゃあ今日は」
そしてだ。ここでだった。
「甲子園に行くか」
「今日もですね」
「聖地巡礼だ」
甲子園こそはだ。彼のメッカであった。
「阪神の輝かしい勝利を見に行こう」
「行ってらっしゃい」
「いやいや、君もだ」
裕也を誘うことも忘れなかった。
「君もだ。暇だろう?」
「それはそうですけれど」
裕也もそれは否定しなかった。目をしばたかせながら彼に答える。
「帰ってもゲームするだけですし」
「それならどうだ。阪神の勝ちをこの目で見るんだ」
「ソフトバンクじゃないんですね」
「パリーグはそれでいい」
とりあえず彼がソフトバンクファンなのはいいとするのだった。やはり巨人以外には非常に寛容であった。
「しかしセリーグはだ」
「特に贔屓の球団ないですけれど」
「それだと阪神ファンになるんだ」
こう彼に言うのである。
「いいな、その為にだ」
「僕を連れて行くんですか」
「世界を黒と黄色で覆い尽くす」
それが学の望みであり夢だった。夢はかなり大きい。
「その為にだ。僕は布教しているんだ」
「阪神って宗教だったんですね」
「そうだ。そして敵はだ」
「巨人ですね」
「君は巨人ファンにだけはさせない」
彼は言い切った。
「絶対にだ」
「わかりました。じゃあ」
ここでだ。彼は内心ほっとしていた。今日の試合の相手は広島だ。巨人ではない。学は巨人以外に負けても極端には荒れないのである。
それでほっとしながらだ。彼について試合を観るのであった。
そうした日常であった。ペナント中は特に激しいがシーズンオフでもだ。学は何処までも恐るべき阪神ファンであり続けていた。
二月になるとだ。絶対にこう上司に申請するのであった。
「また行ってきます」
「またか」
「はい、またです」
もうこれでやり取りが成立するまでになっていた。
「キャンプに行ってきます」
「よし、わかった」
上司もこれで納得するのだった。そうしてだ。
有給休暇を取ってだ。阪神のキャンプ地に行く。そうして数日して帰ってきてこう言うのである。
「今年の阪神はいけるな」
「いけますか」
「新人の伸びがいい」
裕也に話すのである。彼に対してだけではないがだ。
「それにベテランも健在だ」
「それじゃあですか」
「今年こそは絶対に優勝だ」
断言さえするのであった。
「もうぶっちぎりで
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