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婆娑羅絵巻
壱章
信太の杜の巫女〜下〜
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めて)役に立ったし許してやるか……。
Thanks、前田の風来坊。


「………藤次郎様。」
不意に名を呼ばれ隣の鈴彦の方に顔を向ける。
「Ah…?どうした?」

「私、誤解とはいえ貴方様に斬りかかったのに甘味奢って頂いてしまって宜しいんですか?」
鈴彦は気まずそうに眉を下げ苦笑した。

「お互い様だろうよ、……外出たの久しぶりなんだろ?、それにこうして暇潰しまで付き合わせちまったしな。」

「ですが流石に何もしないわけには…。」
うぬぬ、と口を結んではどうしようかと考えている。

……なんだか弄らしく思い、ちょっこっと意地悪したくなる。
どうしてやろうか考え、ふとあることを思いつく。

「そんなら、その団子貰えるか?」
半分冗談で聞いてみた。
今残っているのは手に持っている串に刺さっ た食いかけの一個のみ。
ホントに貰えたら美女の食いかけだし、喜んで食べるが……

「え、あぁ…これですか?」
これでもいいなら、とその一本を躊躇なく鈴彦は差し出す。

……オレが口にしたら間接的に口を合わせたことになる、その事を分かっているのだろうか?
あまりにも無防備過ぎる。
じっと見つめていると首をかしげて見つめ返してきた。
自分の指を唇に当て、それを鈴彦の唇に軽く当てる。

「………あ」
間を置いて鈴彦が小さくつぶやいた。
その時、初めて自分がしようとしている行為の意味がわかったようだ。

差し出していた手がぎこちなく離れていく。
その離れようとする手を掴み、串に刺さった団子を口に入れた。

「御馳走さん。」
串を持った白い手を放し、思わずにゅっと口許が緩む。

一方の鈴彦はというと、
「あ…え、えっと……………。」
困惑して歯切れが悪くなり身体を小さく縮ませては、顔を鬼灯のように真っ赤に染めフルフルと身を震わせている。
少し、意地悪が過ぎたか。

____頭をくしゃりと撫でると更に耳まで紅く染め、顔を伏せてしまったが鈴彦は何も言わず、顔を伏せたまま大人しく撫でられていた。



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