暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
番外編 〜喫茶店のマスター〜
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?」
「え、えーと……」

 初めて来た美容院とか床屋って緊張する。髪型の指定とか全然やったことないし、よくわかんなくて……。

「えーと……」
「?」
「さっぱりさせたいんですけど……お、おまかせって出来ます?」
「かしこまりました。んじゃ適当に短くしちゃいましょっか」

 『ちょっと失礼……』と言いながら僕のほっぺたを少しさわり、『今日は髭剃りはいらないですね……また次の時にでも』と床屋さんは言い、僕の散髪が始まった。

 散髪中、床屋さんは静かにチョキチョキと僕の髪を切っていた。表情はとても真剣なのに、目の感じはとてもやわらかい、とても優しい感じのする人だ。散髪中特に話しかけてくることもなく、柔らかいけど真剣な表情で終始髪を切り続けていた。おかげで僕の緊張は最初だけで、散髪が始まって数分後にはリラックスしはじめていた。

「……髪の長さはこんな感じでいいですか?」
「はい。ありがとうございます」
「んじゃシャンプーしちゃうんで、シャンプー台に移ってください」

 言われるままに案内されたシャンプー台に向かい、シートに座る。床屋さんがやってきてシートのリクライニングを倒し、床屋にしては珍しい仰向け式のシャンプー台でシャンプーしてくれた。

「お湯の温度は大丈夫ですか?」
「はい」
「かゆいところはないですか? 足の裏以外で」

 これは床屋さんなりのジョークなのかな? 乗っといた方がいいのかな?

「え、えーと……右の足の裏の……」
「却下ですよ〜」

 酷い……僕は床屋さんのボケにボケ返しただけなのに……。でもこの床屋さん、優しかったりかっこよかったりするだけじゃなくて、けっこうフランクな人みたいで安心だ。

 こうしてシャンプーが終わった後、散髪台に戻って髪を乾かしてくれる。その最中、お店の入り口が開き、白いセーラー服とハーフパンツを履いた3歳ぐらいの男の子がお店に来た。よく見たら、えらくご立派なアホ毛を携えてる子だった。

「とうちゃーん。今日も父ちゃんのお仕事見てていいくまー?」
「母ちゃんの口癖を真似るのはよせ。今はお客さんいるからまた後でな」
「その父ちゃんのしごとっぷりが見たいくまー」
「お客さんいるんだから……」

 床屋さんの子どもと思しきこの子と床屋さんの会話がおかしい。この子の変な語尾はどうやら母親譲りのようだ。……ひょっとしてマスター? でもマスターそんな口癖言ってるとこ見たこと無いしな……家族の前でだけ言ってるのかも?

「僕はいいですよ。あとは髪乾かしてくれるだけだし」
「「いいんですか(くま)?」」

 息ぴったりの親子の反応に笑ってしまう。この床屋さんといいミア&リリーのマスターといい、人の緊張をほぐす天才なんじゃないかと思うことが今でも
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