巻ノ三十四 十勇士その二
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「実にな」
「いえ、それがしはです」
「御主の功ではないか」
「全て家臣達の手柄です」
そうだというのだ。
「それがしは何も出来ませんでした」
「その者達がいなければか」
「はい」
共に飲むその家臣達を飲みつつ兄に答えた。
「まさに」
「それを言うとわしもじゃ」
「兄上もですか」
「やはり家臣達がいなければな」
彼一人ではというのだ。
「とてもな」
「働けなかったというのですな」
「そうじゃ、一人で出来ることは限られておる」
それでというのだ。
「それを言うとわしも同じじゃ」
「そうなりますか」
「わしもな、しかしじゃ」
それでもとだ、信之は幸村にあらためて言った。
「御主自身忍の術も使って戦ったな」
「敵が上田に入った頃は」
「そのことも功じゃ」
そうだったというのだ。
「父上も見ておられるぞ」
「そうですか」
「実際にな、それで明日じゃが」
その明日のこともだ、信之は話した。
「よいな」
「論功ですな」
「うむ、その者達もじゃ」
猿飛達もというのだ。
「論功を受ける」
「この度の戦は」
幸村も言う。
「この者達も頑張ってくれました」
「それもかなりな」
「忍として働き戦の場でも」
「城でもな」
「はい、まさに一騎当千の働きでした」
それでというのだ。
「その功かなりのもの」
「父上も褒美を弾まれるだろう」
「ですな」
「ううむ、褒美はです」
「特にです」
十人は褒美と聞いてだ、特に喜ぶことなくこう信之と幸村に答えた。
「いりませぬ」
「我等は今のままで充分です」
「これ以上禄はいりませぬ」
「銭も宝も」
「そうか、御主達は無欲だな」
彼等の言葉を聞いてだ、信之は考える顔になって述べた。
「いらぬか」
「はい、別に」
「これといって」
「難儀もしておりませぬし」
「ですから」
「そうか、しかしな」
それでもとだ、信之は彼等に言った。
「御主達の働きは見事であったからな」
「だからですか」
「大殿は我等に褒美を下さいますか」
「そうされますか」
「父上は功には報いられる方じゃ」
だからというのだ。
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