圏内事件 ー真相ー
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重していた悪戯心が急激に主張し始める。
手始めに犬耳に指を伸ばし、親指と人差し指で擦るようにして触ってみたり、先端を手のひらで包むようにして、撫でたりとしばし楽しんでいた。自分の指の動きに合わせ、自在に形を変えるのが面白くてつい夢中になって弄っていると、「オイ」と若干怒気を孕んだ声をかけられた。
「……なにやってんの」
「あ、あはは……。起きてたんだ」
下に視線を向けると半目に開いた瞳が私に向いていた。一目見て、不機嫌だとわかる彼の表情を見て冷たい汗が頬を伝う。ソファから体を起こし、隣に座ったまま向き合うこととなり、冷や汗が止まらない。ゆっくりと顔が近づいてきてーー
「……え、ちょ、顔近っ」
「ーーッ!!」
「フギャァ!?」
ゴンッと音が響き、目の前に星が散った。すぐに頭突かれたとわかったが、いかんせん意外な行動過ぎて回避もままならず、結果としておでこがヒリヒリとした熱を持つハメになった。思わず眼に涙が浮かぶ。
「ひ、酷いんじゃないかな!? 女の子にヘッドバットなんてさっ!」
「晩飯抜きのが良かったか……?」
「すいませんでしたっ!」
抗議の声を上げるも、冷ややかな声音で返され、見事撃沈。今回は悪戯した自分が悪いので非は認め、反省しよう。そして、次のチャンスに活かすのだ。
「……反省する気ねぇだろ」
ーーもちろん!!
そのあと、宿屋での一件と、アスナから送られてきたメッセージに書かれたシュミットの証言の概要を整理していた。だが、やはり真相はいまだわからない。唸りながら、首を捻って考えてようがわからないものはわからない。私には、某少年探偵のような事件解決能力はないのか、諦め気味になっていると相方に呼びかけられた。
「なぁ、メールだけってのもアレだしさ。シュミットに直接聞きに行かないか?」
「えぇ〜……まぁ、いいけど」
アスナ筆のメッセージはかなり詳細に纏められていたが、ユーリは本人が話したこととの微かな齟齬を気にしているのだろう。本人から聞いた内容と、あいだに人を挟んで伝わった内容とでは若干だが内容の食い違いが発生する。伝言ゲームがいい例だ。
人の生き死にが関わっている事件だけあって、妥協なんかしてられない。
一応シュミットにメールで許可取りをしようとフレンド一覧を開いた時だった。
「…………え、なんで?」
「ん、どうした?」
彼の現在地がDDA本部のある56層ではなく、既攻略層であるはずの19層になっていたのだ。
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