圏内事件 ー真相ー
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まらない。
ーーキリトさん、ごめんなさい。騙すような真似をして。
ーーアスナさん、ごめんなさい。もっとお話ししたかったです。
ーーユーリさん。あのふわふわ、本当は触ってみたかったです。
窓から身を乗り出したキリトさんの顔がどんどんと遠ざかる中、走馬灯のように想いが巡る。
全部終わった後で、話したら許してくれるかなぁ。やっぱり、無理かなぁ〜。
「…………ぐっ??」
全身に衝撃が走り、不快な感覚に苦悶の声を漏らす。
ズンッと音が響き、体が大きくバウンドする。それがトドメとなったのか、私の背後、隠されていた短剣が刺さったままのクッションの耐久値が限界に達し、青いポリゴンの飛沫が漏れ出す。
同時に短衣の内側に忍ばせてあった転移結晶を握り締め、ボイスコマンドを紡ぐ。
「転移ーーー」
私の仮想体を青いエフェクト光に包まれた。パシャという破砕音とともにーー彼らの目から私を隠すようにーー青いポリゴン片が撒き散らされた。
◆◇◆
あまりにも、あっけなく消滅したヨルコさんを見て、この室内の誰もが言葉を発せずに居た。衝撃が覚めやらぬ中、キリトが二ブロック離れた屋根に佇む不審な人影を見つけ、叫んだ。
「野郎っ……!」
「っ!ばっ……待てっ!」
窓枠に脚をかけ、飛び出して行ったキリトを追う。
「二人とも、だめよ!」
背後からアスナの警告が飛ぶ。
理由は明白だ。圏内でありながら、ヨルコさんを屠った一撃を喰らえば、俺らもただで済まない可能性がある。
その危険性を十二分に理解しているが、キリトとアイコンタクトを交わすと屋根瓦を蹴り、駆け出した。
キリトがそうしたように腰に吊るした刀の柄へと右手を置く。理論上、相手にダメージを与える事は出来なくても、一撃死させる投擲を叩き落とす事はできる。
眼下の道を行き交うプレイヤーたちの視線を構う事なく、ローブの裾をなびかせ、屋根から屋根へと飛び続ける。
一方で、フーデッドローブの暗殺者は逃げる事も、迎撃する素振りも見せず、猛追する俺らをただ眺めていた。
両者を隔てる距離が建物二つ分となった時、不意に暗殺者の右手がローブの懐へと差し込まれた。
(……っ!来るかっ??)
掴む右手に力が込もる。
しかし、取り出されたのは黒い短剣ではなく、西陽を浴び青く煌めく結晶体。
(ーーー 転移結晶 !?)
「くそっ!」
並走するキリトが毒づく。疾駆しながら、ベルトから投げ針を三本同時に抜くと、一息に投擲した。
反射的な回避動作を取らせ、コマンド詠唱を遅延させるために投げられたそれらは銀のエフェクト光を纏っ
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