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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十話  憲法制定に向けて
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うとトリューニヒトが笑い声を上げた。
『問題は無い。元帥からは君と連絡を密に取るようにと言われている。彼は同盟政府が疑心暗鬼になって暴走する事を酷く恐れているよ』
「ほう」
暴走か、我々が一番恐れている事だ。

『妙な話だが同盟の安定を一番願っているのはヴァレンシュタイン元帥だろう。彼は併合までの道のりをソフトランディングで持って行きたいと考えている。信じても良いと思うね』
「なるほど」
確かに妙な話だ。同盟では一番信用出来ないと言われている人物が一番我々の事を案じ信用出来るとは……。世の中は不思議で満ちているな。

『ところで、妙な男に会ったぞ?』
「妙な?」
『アーサー・リンチ。覚えているか?』
「アーサー・リンチ?」
聞き覚えが有るような気がするな。誰だ? トリューニヒトは妙に楽しそうな表情をしているが……。

『分からんか。エル・ファシルで民間人を置いて逃げた……』
「あのリンチ少将か!」
思わず声が大きくなった。会った? ではリンチ少将は帝国に居るのか?
『彼は今帝国でヴァレンシュタイン元帥の仕事を手伝っている』
「……まさかとは思うが」
トリューニヒトが頷いた。

『そのまさかだ。彼は憲法草案作成のメンバーの一人だよ』
「……信じられんな」
溜息が出た。スクリーンからはトリューニヒトの笑い声が聞こえる。まさに、世の中は不思議で満ちているな。というより帝国はどうなっているんだ? さっぱり分からん。








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