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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十話  憲法制定に向けて
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との協力関係には十分に注意が必要で帝国、同盟、そのいずれかが軽率な行動をとると反政府運動が激しくなり同盟政府は不安定になると警告している。但し、帝国政府の最近の動向を考えると十分に同盟政府の立場を理解しているようだとも報告書には書かれていた。……これまた結構な事だ。同盟政府は安定しつつある。そして同盟政府は信頼出来る政治的パートナーを得たという事だろう。帝国政府はフェザーンとは違うという事だ。腹立たしい! シュレッダーで細断したい気分だな。

TV電話の受信音が鳴った。有り難い事だ、この忌々しい報告書から逃れる事が出来るとは。受信ボタンを押すと愛想の良い見慣れた顔が有った。見たい顔かどうかは……。溜息が出そうだ。
『やあレベロ、元気か?』
「あまり元気ではないな。この椅子は座り心地が極めて良くない」
最高評議会議長の執務室に有る椅子の肘掛を叩くとトリューニヒトが困った様な笑みを浮かべて頷いた。きっと演技だろうと思う自分が居た、最近性格が悪くなった様な気がする。気の所為ではないだろう。

『済まないな、レベロ。君とホアンには面倒を押し付けてしまった』
「気にするな、トリューニヒト。この椅子に座るにはそれなりの覚悟が要る。無責任な奴には任せられん。お前さんの言う通りだ」
『……』
「十年が勝負だと言っていたな、トリューニヒト。それは外れたぞ、多分五年が勝負だ」
トリューニヒトが渋い表情で頷いた。帝国の動きは非常に速い……。同盟は翻弄される一方だ。トリューニヒトも驚いているのかもしれない。

『レベロ、今度帝国は憲法を制定する。その草案作りのメンバーに私が選ばれたよ』
「本当か、それは」
『ああ。私の他に七人で草案を作成する』
「全員で八人か」
良い事なのだろう。八人の中の一人、その発言力は決して小さくない筈だ。そしてトリューニヒトはそれなりにヴァレンシュタイン元帥に信頼されているらしい。

『皇帝主権、基本的人権の尊重、この二つが憲法の背骨になる』
「やはりそうなるか」
『ああ、そうなるな』
主権在民ではない憲法。それが発布された時、同盟市民はどんな反応を起こすか……。暴動が起きるかもしれない。溜息が出そうだ。

『ただ議会の設置は認められそうだ』
「ほう」
思わず声が出た。ヴァレンシュタイン元帥は議会制民主主義には否定的だった。しかし議会の設置そのものは認めるのか……。だとするとどうやって民意を議会に反映させるかだな。

『それと憲法制定メンバーには改革派の政治家達も居る。彼らと少し話したんだが議会制民主主義に好意的なので驚いたよ』
「本当か?」
思わず笑ってしまった。トリューニヒトも笑いながら“本当だ”と言った。
『どちらかと言うと賛美に近かったな。民主共和政国家の元首長としてはいささか面映ゆかっ
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