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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十話  憲法制定に向けて
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つなら問題は無いと思います。幸いここには同盟出身で議会というものを熟知している人が居る。如何すれば混乱せずに済むか、そこを検討していきましょう」
司令長官の言葉に皆が頷いた。

帝国臣民は政治的成熟度が低いと言われる事が有るが本当にそうなのだろうか? 彼らは誰が政治を行うかについてそれほど関心を示さない。彼らにとって大事なのはどのような政治が行われるかだ。皇帝だろうと寵姫だろうと廷臣だろうと善政が布かれるならば帝国臣民は喜んで受け入れるだろう。過程に囚われず結果を重視する。或る意味において能力の有る者が政治を行う事を認めていると言えよう。それを政治的に未熟だと言い切れるのだろうか?

そういう目でヴァレンシュタイン司令長官を見ているといかにも帝国風のエリートなのだと思う。冷徹で権力の行使に躊躇いが無い。そして軍の実戦部隊の指揮官で有りながら極めて広範囲に及ぶ権力を保持している。民主共和政国家では有り得ない事だ。しかしその事で司令長官が帝国臣民から非難を受けた事は無い。彼らは司令長官がもたらした結果に満足している。

司令長官が帝国創成期に生まれていれば間違いなくルドルフ大帝の信頼を得て大貴族になっていただろう。もっとも爵位など要らないと返上したかもしれない。娘婿に選ばれた可能性もあると思う。でも皇女の嫁ぎ先が平民って有り得ないわね。大帝は爵位を要らないという司令長官と相手が平民では降嫁出来ないと言う皇女、皇后の間で頭を抱えたかも。

案外皇女が司令長官に好意を持って駆け落ち同然に押しかけ女房になったかもしれない。帝国創成期最大のスキャンダルかな。そうなれば帝国の歴史も変わった可能性はあると思う。平民達の待遇が改善され貴族達があれほど野放図に特権意識を持つ事も無かったかもしれない……。

「准将」
「はい」
「何か楽しい事でも有りましたか?」
司令長官が、皆が訝しげな顔をしている。もしかして私にやけてた?
「いえ、やりがいのある仕事を与えられたので嬉しくなったのです」
いけない、仕事優先。楽しい妄想は後にしよう。



宇宙暦 799年 10月 27日    ハイネセン  最高評議会ビル ジョアン・レベロ



財政委員会から上がってきた報告書には金の価格が落ち着きつつある。株価も落ち着き経済の状況を表す指標は安定方向に向かいつつあると書いてあった。後は景気高揚対策を行い雇用の確保を図る事で軍縮小に伴う失業者の増加に対応するべきだとも。……結構な事だ。この報告書には自由惑星同盟は経済面において幾つか問題は有るが解決は可能で未来は極めて明るいと書いてある。気休めにもならん、報告書を放り捨てた。

次の報告書、法秩序委員会からの報告には各地で頻発していた反政府運動は下火になりつつあると報告が来た。そして今後の帝国
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