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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十話 憲法制定に向けて
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いるようだ。それにしてもこの八人、亡命者は私も入れれば三人、軍人は二人、貴族が二人、改革派が二人。バランスを取っている。
「幾つか押さえておいて欲しい点が有ります。先ず主権ですがこれは皇帝主権とします。そして帝国臣民の基本的人権の尊重。これは例え皇帝といえども冒す事は許されない」
「主権在民ではないのですな」
ルーゲ司法尚書が質問では無く確認をした。念を押したのだろう。司令長官が頷く。
「主権の拡散は好ましくありません。主権者は少ない方が政治責任の所在がはっきりします。権力の行使についても自覚を持たせる事が容易でしょう」
トリューニヒト審議官が頷いた。但し表情は明るくない。主権在民でないことが不満なのか、それとも同盟での混乱を思ったのか……。
「なるほど、主権は与えないが人権は尊重する。それによって平民達を守ろうという事ですか」
「その通りですよ、民生尚書。リヒテンラーデ侯との合意事項です」
「なるほど」
ブラッケ民生尚書がリヒター自治尚書と顔を見合わせ頷いた。リヒテンラーデ侯との合意事項という事は決定事項という事だ。その事を改めて理解したのだろう。
帝国人が主権について質問するのに対してリンチ審議官もトリューニヒト審議官も主権については何も言わない。ヴァレンシュタイン司令長官は主権について、民主共和政についてかなり厳しい見方をしている。無知によるものではない、むしろ驚くほど良く知っている。その上での否定だ。二人ともその事を理解している。何より銀河連邦は自壊し自由惑星同盟は敗れたのだ、民主共和制は専制君主制に二度敗れた、その事実は重い。
同盟領で反帝国運動による混乱が生じると同盟市民はその事を理解しているのかと疑問に思う事が有る。同盟内に居ては主権在民は当たり前の事にしか思えないのだろう。だが帝国に居れば主権在民は当たり前の事ではない。そしてその事に帝国臣民は特別不都合を感じていない。主権が何処に有るかと政治の善し悪しは別問題なのだ。民意が反映されなくても善政が行われる事は有る。
「それと行政、司法、立法、いわば統治に関わる部分において皇帝が保有する権利、これを明文化し混乱が生じないように、暴走する事が無いようにする必要も有ります」
「なるほど。……議会は如何しますか? いや勿論閣下が選挙による議員の選出に否定的な事は分かっています。私も現状では難しいと思いますが……」
ブラッケ民生尚書が司令長官を窺う。議会制民主主義に否定的な司令長官を慮っている。
「しかし何らかの形で議会は必要ではないでしょうか。三権を分立させそれぞれにおいて皇帝の権力が暴走するのを防ぐ。私は立法府は必要だと思います」
リヒター自治尚書が発言すると司令長官が頷いた。
「議会が必要だという事に反対はしません。それが帝国の統治に役に立
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