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乱世の確率事象改変
桃の香に龍は誘われど
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いなく他人事なのだろう。他の土地のことなどどうでもいいと、その顔には書いてあるようだった。
 それがどうした、だからどうした、そんな話になんの価値があるのか……口を開けばそんな言葉が今にも飛び出しそう。
 桃香は眉を寄せ、深く息を吸い込む。僅かに輝きを取り戻したように見える瞳から、劉璋は彼女の本質を読み取り始める。

――やっぱこいつは他の人間を救いたい状況になれば立ち直るらしい。思考の切り離し? いや、ただ単に救済欲求の発露ってとこか。傷つきそうな人間を放っておけない、そんな性質。

 呆れる程のお人よしだ、と劉璋は思う。
 まったく理解出来ない人種ではあるが、やはり劉備はこうでなくてはと一人納得してもいる。
 だが、目の前の状況よりも他の地域を優先しようとしている彼女の心に、深い呆れと苛立ちも覚えた。

「お前、益州の状況分かってて言ってやがるのか?」
「……っ」

 昏く影の差した桃香に構わず、尚も劉璋は言葉を並べて行く。

「城の文官や武官たちの不振な動きはお前らも察知してんだろ? こそこそと他の街の奴等も怪しい動き見せてやがる。其処でお前ら劉備軍がこの成都を離れるとなれば……悪いことしか起きねぇぞ。俺への忠臣が暴走してお前らを襲うかもしれねぇし、俺の意思に関係なく孫呉を狙うかもしれねぇ。そんでもって曹操に呼応してお前らを皆殺しにするってこともあるだろう。
 最悪の事態ってのを考えるのならやっぱり転覆だ。俺の立ち位置に“誰か”が居座ろうとして戦が起きることだ。また益州の権力争いの蒸し返し、そうなりゃ救援どころじゃなく、お前らだって否応なしに巻き込まれるぜ?」

 欲望と野心を溢れさせて龍の玉座を狙うモノも居る、劉璋は人を信じていないし、部下達のことも疑っている。
 忠義を持ちしモノ、野心を抱えしモノ、どちらにも属さぬモノ、臆病に吹かれているモノ……千差万別の人間がいると予測しているのだ。
 もはやそれほどまでに劉璋の影響力は薄まってしまった。自身が怠惰を望んでいたことも拍車を掛けて、部下達を抑えきるには彼一人ではどうしようもない。

 虫が身を這いずりまわるような気持ち悪さは感じていた。それはきっと、部下達の心がいろいろな方向へと向かってしまったことにもよるのだろう。
 特に朱里や藍々に関わればれば関わるほどに、文官達の小さなプライドは己の存在を証明したくなってしまう。それが恐怖であれ、憤慨であれ、同調であれ、である。
 下地は出来ていた。爆弾を投下したのは黒麒麟徐公明その人。あの謁見以来、成都の文官達の心は収拾がつかなくなっていたのだ。

 彼の語る予測に桃香はさっと顔を蒼褪めさせる。
 分かっていた。しかし劉璋自身が語るからこそもう手遅れなのだと思い知らされる。

「はっきりきっぱり言って
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