壱章
信太の杜の巫女〜中〜
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、在原 業平(ありわらのなりひら)。
艶やかな色気で女を虜にするような、甘美でありながら何処か背徳的な雰囲気。
なんとも言い難い熱情から、全身に流れる血が沸騰し始めたかのように、爪先がじんじんと熱を持ち始める。
若しかしたら、男をこんなに長い間見つめたのはこれが初めてかもしれない。
暫く沈黙が続いたが相手の方が立ち上がり先に口を開いた。
「…オレの名は藤次郎(とうじろう)、……アンタ、いや"オマエ"の名は?」
手を差し伸べられ名前を聞かれた途端、動揺とともに現実に引き戻される。
藤次郎は手を差し伸べたまま僅かに頭を傾けじっと見つめる。、
。
「……鈴彦(すずひこ)、です」
信芽の名は遠くまで知られている、此処は織田での名ではなく別の名を名乗っておこう。
「鈴彦、ねぇ………手首大丈夫か?」
真の名を言えない申し訳無さと心配してくれたことに対するフクザツな感情から目を逸らしてしまったが信芽は小さく頷き、手は差し出した。
「そうか…なら良かった、………痛かっただろ?」
藤次郎は差し出した手を軽く擦り、反対の手を力強く握り返しては引っ張り、立たせてくれた。
____初めてかもしれない、親族や親しい友人以外の誰かに手を握られたり労られたのは。
だが、不思議と悪い気はしなかった。
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