百一 鬼の国
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天井を突き崩して現れた、口許を覆面で覆う青年――ギタイが冷笑を浮かべて足穂を見下ろしていた。
素早く刀を抜き払った足穂を余裕であしらうと、ギタイは寝所の奥へ眼をやった。天井を崩した際の衝撃により、所々破れた御簾の隙間から華奢な姿の少女が垣間見える。
「見つけたでありんす」
妙な言葉遣いで一層笑みを深めるギタイ目掛け、足穂は猶も刀を振り被った。
だがそれをまるで煩い蠅を払うようにギタイは容易に弾き飛ばす。手から離れた刀と共に床へ投げ出された足穂は、ギタイの傍らに何時の間にか立っていた新たな青年の姿に眼を見張った。
「その巫女の命、貰い受ける」
四人衆のリーダーたるクスナがそう宣言するや否や、彼は御簾向こうに座り込む少女に向かってクナイを投げつけた。
刀と同じく眼鏡まで弾かれた足穂は、鋭利な刃物が己の主人の胸元へ飛んでゆくのをぼやけた視界の中で見た。
「紫苑様っ!!」
一抹の願いを込めて、足穂は叫ぶ。だがその願いむなしく、少女は――紫苑はぼんやりと座り込んだまま、己の胸目掛けて突き進むクナイを眺める。
足穂の逃げてくれ、という叫びも、敵の嘲りの声も、彼女の耳には届いていないようだった。
クナイが紫苑の前の御簾を引き裂いて、そして…――――。
「紫苑様―――ッ!!」
瞬間、紫苑の瞳に、夢で幾度も視た金色が過った。
同時に、胸元まで迫っていたクナイが粉々に砕かれる。
クナイの砕片がパラパラと散りゆく中、それまで何の反応も示さなかった紫苑の眼が大きく見開かれた。
「お前は…―――」
「鬼の国の巫女――紫苑様であらせられますね」
黒地に赤い雲模様。脱ぎ捨てた黒の外套から現れた純白の羽織。胸元に光る『朱』と施された指輪の首飾り。
金色の髪を靡かせて、少年は気配も無く現れた。
紫苑が夢で視た通りの姿で。
「『暁』より馳せ参じました。うずまきナルトです―――以後、お見知りおきを」
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