暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
番外編 〜最期〜
帽子
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の艤装に直撃したようだ。艤装が壊れた。これでは反撃が出来ない。敵の戦力を削れない。

 軽巡と駆逐の砲撃も始まった。はじめこそ距離を測り損ねた砲撃で私に当たることはなかったが、私は今動くことが出来ない。次第に砲撃は挟叉となり、私の身体を捉え始め、私の身体に直撃していった。主機を動かしてみるが、さっきの雷撃のせいかほとんど稼働しない。かろうじて海面に立っているのがやっとの状態だ。

「負けない……私は絶対に帰るんだから……一人前のレディーなんだから!!」

 敵の砲撃が、私の身体に容赦なく突き刺さっていく。響の帽子だけは傷つけないように……響との大切な約束の証だけは、絶対に何があっても守らないと……

――こっちだ暁

――電が暁ちゃんを引っ張るのです

 気のせいだろうか、あの時と変わらない姿の響が、私をなんとか立ち上がらせようと、必死に私を抱きかかえようとしていた。轟沈する前の元気な姿の電が、泣きながら私の手を取ろうと必死にがんばっていた。

――私が暁のこと守るんだから!

 私と敵の間に立ちふさがるように、雷が大の字になって私を身を挺して守ろうとしていた。だが敵の砲弾は無情にも雷の身体をすり抜け、私の身体に新たな傷をつけていくだけだった。

 三人の妹は、私を助けようと必死に頑張ってくれている。ならば一人前のレディーの私が諦めるわけにはいかない。

「大丈夫! 暁は一人前のレデイーなんだから! みんなのところに帰るんだから……鎮守府に帰るんだからッ!!」

 私は最後の力を振り絞り立ち上がった。砲撃は止まることなく私の身体を打ち抜いていくが、雷が身を挺して守ってくれている。電が私の手を引っ張ってくれる。響が私の身体を支えてくれている。

 みんなが私を助けようと頑張ってくれている。だったら私は生きて鎮守府に戻らないと……みんなが助けてくれたことを、みんなに伝えないと……ハルに自慢するんだ……司令官に教えてあげるんだ! 三人が助けてくれたって、妹たちが助けてくれたって、司令官に自慢するんだ!!

 煙を上げ、もはや雀の涙ほどの推進力すら出ない主機をフル回転させ、私はその場から離れようとした。砲撃が一層の激しさを増した。魚雷が迫っているのも見えた。それでも私は、退避を止めなかった。寸前の所で魚雷をかわし、砲弾を紙一重で避けた。

 だが、そのままバランスを崩して倒れた私の視界に、自身の主機が入った。主機が動かない理由が分かった。主機を含めた私の両足は、すでに海中に沈みつつあった。

「せめて……せめて響の帽子だけは……!」

 帽子を脱ぎ、それが傷ついてしまわないよう、大切に抱きかかえて守った。

――暁ッ!!

 周囲を飛び交う砲弾の動きが止まり、それらが私の方を向いた状態で宙に浮い
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