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真田十勇士
巻ノ三十三 追撃その十一
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「もう一気に逃げよ」
「我等ももうすぐ川です」
「川に近付いています」
「その川を一気に渡り」
「そのうえで」
「脇目も振らず逃げよ」
 まさにというのだった。
「傷付いてもな」
「それをものともせず」
「まずは、ですか」
「向こう岸まで行け」
 これが鳥居の今の采配だった。
「そしてそれからじゃ」
「傷付いた者を助けて」
「そのうえで」
「上田から出るのじゃ、よいな」
「ですな、まずは向こう岸までです」
「渡りましょう」
 旗本達も応えてだ、そして。
 徳川の軍勢は川の岸まで来るとだ、まだ残っている者達に守られながら一気にだった、川を渡って泳ぎはじめた。
 鳥居は彼等を守りだ、昌幸達の攻めを自ら槍を手に防ぎつつ。
 残り僅かになった時にだ、命じた。
「炮烙を投げよ」
「はい、そして」
「それで、ですな」
「音と煙を出せ」 
 そしてというのだ。
「それに紛れて逃げるぞ」
「では」90
「これより」
 すぐにだった、残っている者達は懐から黒く丸い玉を出してだった。それを真田の軍勢に対して投げて。
 轟音と煙を出させてだ、そのすぐ後に。
 踵を返して一斉に川の中に飛び込んだ、そこから。
 向こう岸に向かって泳いだ。それを見てだった。
 昌幸は全軍にだ、こう命じた。
「よい」
「これで、ですな」
「攻めるのを止める」
「そうされますな」
「うむ」
 そうだというのだった。
「これ以上攻めるのは止めよ」
「ではこのまま」
「敵が上田から出るまでですな」
「攻めぬ」
「そうされますな」
「そうじゃ、徳川家の軍勢は破った」
 それも散々にというのだ。
「これで目的を達した」
「それでは」
「勝ち鬨を挙げよ」
 勝ったその証にというのだ。
「これで我等を攻める者はおらぬぞ」
「徳川家を退けたことによって」
「我等を組み易しと思う家はなくなった」
「だからですな」
「そうじゃ、そのことも祝ってな」
 そのうえでというのだ。
「勝ち鬨を挙げよ、今日は城に帰り祝いをしてじゃ」 
「そしてですな」
「明日からは」
「論功じゃ」
 戦に勝ったその証にというのだ。
「それをやるぞ」
「はい、それでは」
「それを行いますな」
「そうする、ではな」 
 こう話してだ、そしてだった。
 真田の軍勢はまずは勝ち鬨を挙げた、当然その中には幸村と十人の家臣達もいた。幸村はその勝ち鬨の後で彼等に問うた。
「どうじゃ、今の気持ちは」
「はい、やはりです」
「いいものですな」
「生き残りしかも勝てたことは」
「無上の喜びです」
「そうであろう、我等は勝った」
 幸村はこう彼等に話した。
「このことはまさに無上の喜びじゃな」
「全くですな」
「では
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