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水の国の王は転生者
第二十三話 アントワッペン市街戦・後編
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「ミス・ネル。本当にお疲れ様、気分はどう?」

 一人、空を見上げて呆けるミシェルにド・ブラン夫人は労いの言葉をかけた。

「ああ、ありがとうございます。気分は……ちょっと気が抜けちゃいました」

 そう言ってミシェルは年相応の笑顔を見せた。

「それにしても、あの頭の固い貴族連中相手によくもまぁ……あれだけの啖呵を切れたものだと感心したわ」

「あれはちょっと……我ながら出来すぎと言うか。きっと殿下が後押ししてくれたんだと思います。昨日までの私は死んで、今日別の私が生まれたんだと思います」

 数時間前に、風穴のジャコブによって死の淵に立たされていた事を思い出した。

(あの時、古い私は死んで、新しい私が生まれたんだ)

 そう思うと、何でも出来そうな気がする。

「きっと時代が変わろうとしているのね」

「時代が?」

「そうよ、今まで平民のために命を賭ける貴族なんて、皆無……とは言わないけど今までの人生じゃ5本の指で数える程度だったわ」

「……」

「それが、今日だけで10人近くも……こんな事、今まで無かったわ。だからよ、時代が変わるんじゃないかって、そう思ったのよ」」

 ド・ブラン夫人も空を見上げた。

「殿下が、マクシミリアン殿下が現れたからでしょうか?」

「ん〜……分からないわね。時代が変わるためにあの方を生んだのか、あの方が生まれたから時代が変わろうとしているのか。そんな事、始祖ブリミルでなければ分からないわ」

「……そうね、そうですよね」

 結局答えは見つからず、二人して何も見えない空を見上げ続けた。



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