暁 〜小説投稿サイト〜
Tales Of The Abyss 〜Another story〜
#32 船上の戦い
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たのだろうか、或いは今の気分が最高なのだからか。

「ひっひっひっひ…」

 今度は、高らかではないが、確かに笑っていた。高い位置から見下ろしているのだが、はっきりと見えたし、訊こえた。

「っーー。唯の馬鹿じゃなかったんだね……」

 そうアルが呟く。剣も通じず、譜術を返されている。今まで戦ってきた中でも、弱点がまだ見えない厄介な相手だから。

 ディストが、その呟き、愚痴、それに強く反応した様だ。

「だぁれが! 馬鹿ですか!! この私に向かってええ!!」

 だから、反論をしてきたのだ。

「やっぱり、地獄耳だよ………」

 今戦ってる為、色々と騒がしいのにも関わらず、僅かな声量が聞こえた。
 だから、ディストの聴力も驚嘆に値する、と言えるだろう。

 そして、ディストが繰り出した相手も、十分強力で驚嘆だ。


「っくっそ! こいつ!!」


 攻撃を行っても弾かれてしまうのだ。相手にダメージを与えているかどうかがまるで判らない。

 ルークの渾身の一撃が容易く弾かれ、そして隙が出来たルークに向かって、その巨大な機械の腕がルークの身体に直撃した。

「ぐあっ!!」

 ルークは、防御する事も出来ず、吹き飛び倒れてしまった。

「ルーク!! くっ!!」

 ガイが向かおうとしたが、巨体の割に速度も早く、すぐに邪魔されてしまう。

「ルーク! 大丈夫か!? ヒール…」

 ガイに気を取られている隙に、アルが倒れているルークに駆け寄って、治癒術を施した。致命傷ではなかった様で、ルークも直ぐに立ち上がる。

「ああ、大丈夫だ! クソ… どーすんだよ! あんなモン!!」

 ルークが、どうにもならない、と叫んでいた。



 その時だ。ジェイドは何かを思いついたのか、笑みを浮かべていた。

「なら これならどうですか? 荒れ狂う流れよ! スプラッシュ!」

 譜術を発動させた。その瞬間、あのロボットの頭上より、凄まじい水撃が降り注いだのだ。


「ギッ! ガガ…ガ…」


 今回の戦いで、初めてロボットの動きが鈍ったのが判った。
 そして、何より 生き物じゃないのだが、うめき声に似た音も聞こえたのだ。

「成る程ね…」
「機械は水に弱い…っということですか?」

 強靭な金属で覆われているが、中身は機械だ。……機械で出来ている以上は水とは相性が悪いのだろう。
 ティアやアルも、弱点が発覚したことで、余裕を取り戻したようだ。


「おのれ…よくも!!」


 ディストがわなわな震えながら見ていた。
 ディストは、直接戦う人じゃないようなので何も出来ない。全てをロボットに託す以外は出来ない様で、何もしてこなかった。


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