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銀河日記
双頭鷲勲章授与
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会議が開催されていたと聞くが、その折に皇帝が口にでもしたのだろう。事の経緯は、アルブレヒトにとってはどうでもよかったのである。
 アルブレヒトの内心では叙勲が決まるまでの経緯に関わった人間すべてに罵倒と呪詛を浴びせてやりたい気持であった。伯父が軍の要職についているとはいえ、宮廷とはまるきり縁のない時分では宮廷での作法など皆目見当もつかない。背中から冷や汗が落ちるのをアルブレヒトはこの時微かに感じ取った。
「卿の心配は分かるが、宮中の礼儀作法は私が教えてやる。だから、至急自宅に戻り、礼服の準備をしてきたまえ」
「承知いたしました」
アルブレヒトは呪詛と罵倒の言葉をずっと心の中で述べながら自分の抵抗が無意味である事を察し、エーレンベルク元帥に促されるままに退室した。一度分室に戻ると、オーベルシュタインはいつもと変わらず職務に精励していた。
「オーベルシュタイン分室長、デューラー大佐、只今戻りました」
「大佐、卿の新無憂宮への出頭の件は聞いている。先程尚書室からFAXが届いた。行ってきたまえ」
「はっ」
アルブレヒトは帰還報告をしたが、直ぐにいつもと同じの、何の感慨もない様な声ですぐさま送り出された。

 同日の新無憂宮の黒真珠の間にて、昼からささやかな、だが大きな意味を持つ式典が急遽行われた。今回の帝国内の綱紀粛正の功労者アルブレヒト・ヴェンツェル・フォン・デューラー大佐への“双頭鷲勲章”授与式である。突発的な授与式であったため、貴族や軍高官の出席者はそれほど多くなく、簡素であったことはアルブレヒトを少しだけ安堵させた。
皇帝フリードリヒ四世を介して国務尚書リヒテンラーデ候により、“双頭鷲勲章”がアルブレヒトに手渡された。式典は宮殿に到着するまでの地上車の中とその控室の中で行われたエーレンベルク元帥による“宮廷作法講義”により落ち度なくその幕を閉じた。だが、彼に職場への帰還は直ぐには許されなかったのである。

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