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銀河日記
軍靴の踏み鳴らす音
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会に対しての広がりの方が、周囲の目を引いた。密売には湯蕩児や貧窮に追い詰められた貴族達の多くがそれに関わり、その利益が彼らの放蕩の資金となっていたからである。また、それが宮廷や官庁に出仕し、工作するための資金となっている場合もあった。そしてそのため、貴族社会からも多くの人間が逮捕されることとなり、誰も軍を笑うことなど出来なくなった。自分達も同じだったからである。
兎に角、銀河帝国の中には綱紀粛正の嵐が吹き荒れ、憲兵隊はその存在を大きく際立たせた。

だが、帝国軍内部でその火の粉を大いにかぶった者がいる。軍務省に務める軍官僚たちであった。特に人事局である。現職の軍人の一斉逮捕でその職を引き継がせるものの人選に彼らは苦心しなくてはならなくなった。だが、そこに官僚社会、貴族社会へのサイオキシン麻薬密売事件の発展が思わぬ影響を見せた。
幾ら人事案を決めても、そこに退職願、若しくは逮捕の通達で穴があき、また新たな案の作成。それの無限に続くとも思われる連鎖の中で、彼らは日夜残業を強いられた。後退でタンクベット睡眠を採り、二、三日の泊まり込みはほぼ当たり前のこととなった。最盛期には一週間職場に泊まり込むものもあり、人事局は帝都オーディンの不夜城ともささやかれたのである。
憲兵隊、人事局。軍務省管轄のこの二つの組織はこの一連の事件に際して際立った存在感を見せたが、殉職者が出んとするほどの激烈さの職務に日々明け暮れることになった。
自体全ての収集に一応の見込みがつくのは、事件発生から六カ月後のことであった。事態の根の深さと、収集にかかった時間は、銀河帝国という肉体の中に溜まった膿の多さを容易に想像させるものであったが、当事者たちにとってはそんな事はどうでもいいないようであった。彼らは、目の前の案件の山と格闘するしかないのだから。

帝国歴四八一年七月一日、アルブレヒト・ヴェンツェル・フォン・デューラー、パウル・フォン・オーベルシュタインの両名は一連の事件の摘発に功ありとして大佐に昇進することとなった。

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