カルテ作り‐二
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ここで観念しなければ、自分の危険すら危うくなるような予感すらした。
アルブレヒトは軍務尚書に許可を取ると、一旦分室に戻り、例の書類を収納しているファイルを脇に抱えて尚書室に戻ってきた。
「軍務尚書閣下、ミュッケンベルガー閣下、オーベルシュタイン分室長。これをご覧ください」
アルブレヒトは、先日自分宛に送られてきた書類と、これまでの自分の調査結果を、目の前のテーブルに置いた。三つの視線が、テーブルの上にある書類に向かった。その光景を見ながら、アルブレヒトは説明を始めた。
「これは二週間ほど前、小官の自宅宛に送られてきた書類です。最初はこの内容が事実であるとは思えず、半信半疑でありました。しかしこの二週間、出勤時間を早めて調査を行っていくと、真実であることが分かりました。今でも嘘だとは思いたいのですが」
「つまり、貴族もしくは貴族出身の士官が関わっている可能性があると卿は言うのだな」
「誠に申し上げにくい事でございますが、その可能性は極めて高いと小官は考えます。軍務尚書閣下」
「まったく、帝国貴族の誇りとはどこへ行ってしまったのだ」
軍務尚書がため息とともに独語する。
「僭越ながら軍務尚書閣下、至急に捜査範囲を帝国全領域に広げるべきです。恐らくこれは、軍の問題だけでは済みますまい。」
提出者の言葉に対するエーレンベルク元帥の半ば茫然とした呟きに、アルブレヒトは何時になく強い口調でそう言った。
「この書類が事実であるならばやむを得んが、帝国には大嵐が吹き荒れるぞ。デューラー中佐。恐らく、たった数カ月で済むものではない」
「御言葉ですが、ミュッケンベルガー閣下。約五百年に渡って溜まりきった膿を出し切り、思い切った手術を施さなくては、将来この帝国がどうなるか分かりません。幸いにも我が帝国軍にはイゼルローン要塞があります。イゼルローン方面に集中して兵力を集め、この一年間出兵を控えて戴ければ、結果的に軍を強化することにもなりましょう」
「私が元帥、宇宙艦隊司令長官になっての初仕事が宇宙艦隊の綱紀粛正とは、些か巡り合わせが悪いものだな。これでは祝うものも祝えぬではないか」
これより少し前に、宇宙艦隊司令長官の交代人事が決定し、ミュッケンベルガーは元帥へと昇進し宇宙艦隊司令長官への就任が内示されていたのである。
「畏れながら閣下、吉事は延期できても、凶事は延期できる事ではありません。小官はそう考えております」
やや憮然としたミュッケンベルガーの呟きにオーベルシュタインは間髪いれずに、そう発言した。その姿を見てアルブレヒトは相変わらず物怖じしない人だと、心の中で苦笑した。
「ミュッケンベルガー上級大将、残念だがオーベルシュタイン中佐の言う通りだ。卿には心苦しい事であろうが致し方あるまい。放置しておいても何れは取りかかるべき問題。早期に解決す
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