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銀河日記
カルテ作り‐二
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てくる。その姿は、アルブレヒトが見慣れた人物の者だった。
「アルブレヒト、お前が此処にいたのか」
「御久し振りにございます、ミュッケンベルガー閣下」
「ミュッケンベルガー上級大将。デューラー中佐と卿は知りあいなのかね?」
目の前の二人の会話を不思議に思ったのか、エーレンベルク元帥は尋ねた。ミュッケンベルガーの上級大将とアルブレヒトの中佐の間には五つの階級の壁があり、こうも気楽には会話が出来ないはずだ。
「ミュッケンベルガー閣下は小官の伯父上にあたられます、軍務尚書閣下」
「伯父。つまりは、デューラー中佐は甥か。ほぅ、卿も随分と仕事熱心な甥を持ったものだな、ミュッケンベルガー上級大将」
アルブレヒトの回答に、軍務尚書は眉の角度を僅かに跳ね上げ、若干皮肉気に言った。小さな憂さ晴らしの気分らしい。それなりに茶目っ気があった。
「仕事熱心ですか。はたして、これがそうですかな。軍務尚書閣下」
「ミュッケンベルガー上級大将、卿にはこの書類の束が見えんのか。この量、全て再提出勧告だ。イゼルローン要塞や警備艦隊司令官をしたこともある卿なら覚えもあろう。卿の甥御の部署の監査では些細な数字のミスすら許してはくれぬ。この数ヶ月間、どれほど私の仕事が増えたことか」
エーレンベルク元帥は心底憎らしげに言ったが、ミュッケンベルガーにはそれが心からの憎しみであるとは思わなかった。勤勉すぎる部下に対する上官の愚痴なのだと、聞かされている彼は思った。
「では軍務尚書閣下、小官はこれにて失礼いたします」
「いや、待つのだデューラー中佐。卿にも残ってもらう。それとも何か急ぎの用事でもあるのかね」
アルブレヒトは、伯父がこの尚書室にやってきた理由を考えて退室しようとした。軍務尚書に呼び出されたということは、何かしら大事な話があるに違いない。年長者二人の間に挟まれる青年士官はそう考えた。しかし、老年の軍務尚書の声がそれを遮った。
「いいえ、閣下。御言葉ながら、小官は中佐という一介の佐官です。上級大将閣下と軍務尚書閣下の御話に同席できるほどの階級でもありませんし、権限もありませんが」
「確かにそれも一理ある。だが、今は卿の見解はどうでもいい。これは命令なのだ、デューラー中佐。それと、至急卿の同僚を呼びたまえ」
「畏まりました。一旦失礼いたします」
アルブレヒトは一度退出すると、軍務省内の通信回線を使ってオーベルシュタイン中佐を呼びだした。

それから約八分後、オーベルシュタインは特に焦った様子もなく尚書室にやってきた。入室するなり彼は尚書室内のソファーの、アルブレヒトの隣に着席を促された。アルブレヒトはもの凄い居心地の悪さを感じていた。
「軍務尚書、私が同席していてよろしいのですかな?」
「構わん。これは帝国軍全体の問題であるのだからな。それに卿も無関係ではな
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