暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
後編
9.店の名前は……
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だよ?」
「球磨は北上の姉ちゃんだけど、さっぱり分からんクマ……」

 球磨はしばらくバイトを探していたようだが、それよりも俺の新店舗の方に興味が移ったようで……

「仕方がないからハルを手伝ってやるクマっ」

 と言い出し、今では俺の新しい店の開店準備を手伝ってくれている。おかげで店作りを任せることが出来、俺としては大助かりだ。

 一度、開店準備の合間を縫って北上がバイトする店に一人で顔を出してみた。どうも客の少ない喫茶店のようだが、おかげで北上のゆるい接客も店に合っており、評判がいいらしい。

「ところでさ、ハル兄さん」
「ん? なんだよ?」
「ちゃんと球磨姉との約束は守ってあげた?」
「霧吹きはこの前俺の頭にさんざん吹きかけてたな」
「それじゃなくて」
「足の裏はまだ掻いてないぞ?」
「もひとつ」

 ……なんで知ってる?

「さーてねー。ねー大井っちー?」
「恐るべき姉妹間連携だ……」
「つーかね。球磨姉がそう言って頑張ってた」
「? あのアホ毛女が?」
「うん。私をおんぶしながら『帰ってハルにいっぱいチューしてもらうんだクマッ!!』って叫んで頑張ってた」
「あのアホ……」

 なんつー恥ずかしいことを……。ついでに聞くところによると、球磨だけでなく北上も、沈んだ子たちの声が聞こえていたそうだ。だが最近はまったく聞こえなくなったと言っていた。

「まーいいんじゃない? 心配事がなくなったんでしょう」
「俺の心配事はお前のことで鰻登りだけどな」
「えー? 私のことが気になってんの?」
「アホ」
「でも残念だねー。私は人のものに手は出さない主義なんだよ」
「義理の妹に手なんか出すかっ」
「やっと妹だって認めてくれたね−」

 北上は、俺の店の隣に喫茶店を出したいと言っていた。こいつなら、そう遠くない将来に実現しそうだ。それまで店をしっかりと続けないとな。

 そうして数週間後、晴れて店は完成した。理由があって開店祝いにかけつけたのは、喫茶店に向かう途中に寄った北上ただ一人。

「ハル」
「ん?」
「店の名前……」
「言うな……」

 店の看板を見た俺は、北上と共に絶句した。俺は、自分の店に『バーバーちょもらんま鎮守府』という名前をつけ、工務店にもそのままの名前で看板を作るように依頼したはずだ。デザインイメージを見ても問題なかったし、引き渡しの時も問題なかったはずなのだが……

「いやハル兄さん……『バーバーちょもらんま鎮守府“だクマ”』って名前はさすがに自分の嫁を贔屓しすぎだと思うよ?」

 そう。実際に開店当日……と言っても正規の開店日はまだ先だけど……の今朝、看板を見て絶句した。いつの間にやら看板に余計な一言が追加され、シザーバッグに描かれていたも
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