三十一話:理想の代償
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った? フェイントで二丁あるうちの一丁を放しただけかもしれないのに? そもそもだ。犯人が人質に何の枷も細工も施さずに自分の身を晒すとでも? ……まあ、今はこんなことを話す時じゃないか」
怖い。そんなに自分を責めないでくれ。男の声に、瞳に、心がそう訴えるが唇は動かず声は出てこない。何かから逃げるように彼女は目を閉じる。しかしながら男はお構いなしに彼女の傷口を切り開きにかかる。
「僕はね、死ぬべき運命にいる人間を殺して生きるべき人間を生かすのが正しいことだと信じている」
「……そ、それは」
「だから今死んだ者達も最初から死ぬべき運命にいる者達だったんだ。正義の味方が切り捨てる弱者さ」
男は信じているとうそぶく。本当は自分自身も信じることが出来ないような弱い人間なのに。既にそんな理屈は間違いだったことを見せつけられたというのに。男は少女を絶望の底に叩き落とすために言葉を紡いでいく。
「人造魔導士計画、戦闘機人計画、まあどちらでもいい。そういった人間を創る研究はお世辞にも成功率が高いとは言えなくてね。そこに転がっているような失敗作ができることが多い」
何でもない石ころを指さすように男は人質を指さす。人間を創り出すという神に反逆するが如き研究はスカリエッティですら失敗することが少なくはない。もっとも彼の場合はだからこそはまっているというのもあるのだが。
とにかく、失敗作と言われる望まれた性能が手に入れられなかった存在や、そもそも生きていくための能力が備わっていない存在が生まれる。失敗作は処分する。普通の研究では何の問題もないだろう。だが、人間を生み出す研究ではどうするのか。
まさか、燃えるゴミの日にゴミ袋に入れて出すわけにもいかない。どう考えても大事件の発生だ。そうなれば誰も得をしない。では、その失敗作をせめて利益を生み出す形で処分するにはどうすればいいのか。
「そういったものは元々寿命が長くはない。もって一年ぐらいだろう。その間失敗作がどういった扱いを受けると思う? 女であれば売られるか、研究員の性処理道具。男もそういった扱いを受けることもあるが基本は使える臓器に分解されて売り飛ばされる。だが、これらはまだマシな方かもしれない」
どこか自嘲するような、唾を吐き捨てるような表情をして男は言葉を続ける。スバルは彼の話に怒りを覚えることもできずただ何も言えずに聞いていくことしかできない。話の内容からすればやはり彼らを殺したのは男なのだろう。
怒りよりもどうしてという感情の方が大きい。体の内部から爆発させるなどという残酷な殺し方を平然と行う男の心情は全く理解できない。さらに言えば、何故彼はこのような話を自分にするのかもわからなかった。
「最悪なのは再び培養層に入れられて好き勝手に
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