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鎮守府の床屋
後編
7.最後の客
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「……分かった。お前たちも、どうか無事で」
「うん。みんなと一緒に、ハルの隣にちゃんと帰るクマ」
「信じてるからな」
「クマクマっ」
「北上」
「んー?」
「お前も必ず戻ってこいよ」
「ハル兄さんの頼みとあらば、この北上さん、きいちゃいましょー」

 いつもと変わらない脱力っぷりで、北上がそう答えた。

「ハル!! ハロウィンの時はありがと!! 今度はみんなで飲もうぜ!!」

 おう。次はみんなで飲めるように、お前が好きなだけかっぱかっぱ飲めるように、樽酒で準備してやるぜ隼鷹。提督さんによろしくな。

「あの枕、古鷹の膝枕には負けるけど、いい枕だったよ! ハルと一緒に過ごせて楽しかった! ありがとう!!」

 うっせえ妖怪ねぼすけ女。最後みたいなセリフを吐くな。これからもバンバンあの枕で寝てくれなきゃ、俺泣いちゃうからな。

「みんな! 今はおれこの場を離れるけど、おれ戻るからな! バーバーちょもらんまに戻るからな!! そしたらみんなのシャンプーしてやるから! みんなのカットしてやるからな!! だから、ちゃんと頑張れよ! 負けんなよ!!!」
「楽しみにしてるクマ!!」
「球磨! そしたら俺の隣にいろよ!!」
「了解だクマ!!!」

 皆に最後の挨拶を告げ、俺は提督さんから聞いていた脱出ポイントに向かった。去り際にもう一度だけ振り返った時、俺は最期の戦いに挑む、7人の艦娘の後ろ姿を見た。

 鎮守府を脱出した後、おれはモーターボートで市街地に向かった。提督さんが整えてくれた手はずだと、確か市街地で井上さんが待ってくれているはずだ。

 市街地の港に到着すると、井上さんがミアを抱きかかえて待ってくれていた。奥さんとリリーはすでに避難済みらしい。

「井上さん!」
「提督さんから話は聞いてます! 一緒に避難しましょう!」

 井上さんはそういって、俺のボートを港に接岸させる手助けをしてくれた。

「うにゃー!!」
「こらミア……なんでハルさんが来た途端に……」

 なぜかミアが、俺の姿を見るたびに暴れ始めた。抱きかかえる井上さんの手をねこぱんちでぽんぽんと叩き、なんとかして地面に降りようとごそごそと動いている。

「……やっぱ嫌われてるんですかね、俺」
「いや決してそんなことは……こらッ!」

 ついにミアは井上さんの手から飛び出し、トコトコと俺の方に向かって歩いてきた。なぜか井上さんの手から飛び出た瞬間、ミアは静かになった。

「?」
「どうした?」

 ミアが俺の足元まで来た。俺が片膝をついてしゃがみ、ミアに手を出した途端……

「う……」

 ミアは俺の膝から肩に飛び乗り、俺の頭にぽすっと優しく前足を乗せてくれた。

「……」
「にゃ」
「う
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