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鎮守府の床屋
後編
7.最後の客
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督さん。あんたもその一人だ。離れたくないんだよ俺は。最期までみんなと一緒に」

 不意に、少量の火薬が弾けたような、『パン』という乾いた破裂音が鳴り響いた。足元を見ると、縁が焼け焦げた小さな穴が床に開いている。

 火薬のような匂いが鼻をついた。提督さんが拳銃を俺の足元に向けていて、その拳銃の銃口から煙が上がっていた。

「……もう一度言うぞ。この鎮守府から出て行け」
「……」
「次にまた却下だとか言い出したら、容赦なく撃つ」
「……却下ですよ。いくら拳銃向けられてもね。床屋を見くびんな」

 提督さんは、今まで見たことないような恐ろしい眼差しで、俺を睨みつけていた。だが俺も引かない。しばらくの時間、おれと提督さんは互いを睨み合っていた。提督さんの拳銃は終始カタカタと震えながらも俺を狙いすましていたが……

「やっぱこんなんじゃ避難してくれないかー……柄じゃないしなー……」

 ついぞ俺にその銃弾が届くことはなかった。提督さんは、自分の机に拳銃を置いた。

「ハル……」
「はい」

 提督さんは静かに席を立ち、俺のそばまで来ると、俺の肩に手を置いた。その顔にさっきまでの厳しさはなく、どちらかというと、わがままを言う自身の息子に困り果てた、一人の父親のような顔をしていた。

「どうあっても出て行ってはくれないか?」
「当たり前です」
「なぁ……親友として頼む。出て行ってくれないか?」
「……なんでだよ提督さん。親友だったら俺のわがまま聞いてくれてもいいだろ」
「……親友なら、俺のわがまま聞いてくれてもいいだろ?」
「……」

 俺の肩を掴む提督さんの手に力が入った。

「……なぁハル、聞いてくれ。俺達は軍人だ。俺はもちろん、隼鷹や球磨……艦娘たちも、軍人だ」
「……」
「俺達の仕事はな。戦うことじゃなくて、守ることだ。自分が守りたいものを確実に守ることが仕事だ」
「……守ればいい。俺のことも守ればいいだろ。俺のそばで守ればいいだろ」
「ダメだ。それは確実じゃない。それではお前は、戦いに巻き込まれる可能性がある。そうなれば、俺達はハルを守れなかったことになる」
「……だったら確実に守れよ……」
「分かってる。だからお前には、出て行って欲しいんだ。俺達に、ハルを確実に守らせて欲しいんだ」

 言葉の端々に、提督さんの覚悟が見え隠れしていた。俺は提督さんの優しさを含んだ覚悟と気迫に、涙が抑えられなくなっていた。

「頼む。出て行ってくれ。俺達にハルを守らせてくれ。俺達の気持ちを汲んでくれ」
「……提督さん、なんで逃げないんだ?! とんでもない数の敵が押し寄せてきてる……こっちの戦力はまるでない……援軍も来ない……逃げればいいだろ!!」
「……それじゃあみんなを守ることは出来ない。ビ
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