第三話 変わらない声その七
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「そうした学界の権威主義を嫌っておられてなのよ」
「大学病院にも入れていないんだね」
「そうなの、本当に有り難いことにね」
「わかったよ。そうしたことも」
「わかってくれると有り難いわ、とにかくね」
また言う優子だった。
「医者は偉くないの」
「ただ器を治すだけなんだ」
「それだけだから、けれどね」
「その器を治すことがなんだね」
「凄く難しくて大事よ」
こうも言うのだった。
「器が壊れてたら魂はそこにはいられないから」
「だからなんだね」
「医者は身体を治すのよ」
その器をというのだ。
「必死になってね」
「そういうものなんだね」
「そうよ、器は器に過ぎないけれど」
「それと同時になんだね」
「この上なく大事なものなの」
「同時になんだね」
「そのことをわかっておいてね」
こう穏やかに言うのだった。
「そして一番大事なことはね」
「人間は心で人間になることだね」
「身体は器よ」
「それに過ぎないけれどとても大事な」
「そういうものよ」
まさにというのだ。
「身体はね」
「たかが、されどかな」
「そうなのよ」
「そういうものだね」
「そういうことでね、さてと」
ここでだ、優子は。
チーズを一切れかじってだ、それから。
ワインを一杯飲んでだ、優花にあらためて尋ねた。
「食器終わったらどうするの?」
「どうするのって?」
「勉強するの?やっぱり」
「そうするよ、お酒を飲むにしても」
優花としても決して嫌いではない、だからこう姉に返した。
「寝る前だろ」
「真面目ね」
「お酒入ったら勉強とか出来ないじゃない」
「それはね」
「だからね」
それでというのだった。
「今は飲まないよ」
「そうなのね」
「姉さんだってそうじゃない」
「お酒は全部やることが終わってね」
「それからだよね」
「飲むものよ、有終の美を味わってね」
微笑んでの言葉だった。
「今みたいに飲むものよ」
「そう思うからね、僕も」
「さて、一本空けてから」
その有終の美を楽しみつつだ、優子は言った。
「寝るわ」
「今日は早いんだね」
「お風呂も入ったしね」
それも既に済ませたというのだ。
「今日は疲れてるし早く寝るわ」
「それが一番いいよ」
「ええ、よく寝ないとね」
それこそというのだ。
「後でくるから」
「そうだよ、身体はいたわらないとね」
「器はね」
笑ってだ、優子はワインの最後の一杯を飲み干してだ。そのうえで歯を磨いて寝た。優花も洗いものをして予習と復習をしてから寝た。
優花は部活も楽しんでいた、美術室においてだ。
油絵を描いていた、彼のその風景がを見てだ。
顧問の口髭が印象的な先生がだ、こう彼に言った。
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