暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十九話  併合への歩み
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に、出来ない様に持って行く。

その所為で最近同盟には親帝国派って呼ばれる人が増えてきた。帝国に協力して新しい国造りを一緒に行おうっていう人達だ。母さんなんて帝国が年金と国債の保証をしてくれてからは半分以上親帝国派だ。反帝国派はゆゆしき問題だって騒いでいるけどゆゆしきって如何いう意味なんだろう?

その他にも凄い発表がレベロ議長から有った。帝国は遷都を考えているらしい。今の首都、オーディンは帝国の奥深くに有って新しい帝国の首都には相応しくないって帝国の政治家達は考えているみたいだ。だから首都を移す。その新しい首都がフェザーン……。

吃驚したよ、新しい首都がフェザーンだなんて。皆吃驚している。評論家達も凄く興奮している。フェザーンならフェザーン回廊を直接押さえられるし同盟領にも出兵し易い。経済面でも凄く有利だって言っていた。そして帝国は本気で新帝国を造ろうとしているって言っている。

なんかもう帝国はガンガン新しい国造りを進めている感じだ。こっちは全然かなわない、帝国の言う通りにするだけだ。傀儡国家って意味がようやく分かったよ。僕は親帝国派じゃないけど、仕方ないんだろうけど凄く惨めだ。これから同盟はどうなるんだろう……。



帝国暦 490年 10月 20日      オーディン   ミュッケンベルガー邸  ユスティーナ・ヴァレンシュタイン



夫の胸に顔を乗せ深々と息を吸った。微かにソープの香りがした。
「如何したの?」
「いいえ、何も」
私が答えると夫は背中に手を回し私の身体を優しく抱き寄せてくれた。もう一度息を吸った。夢じゃない、夫はここに居て私を抱きしめてくれている。

戦争が無くなっても夫の忙しさは変わらない。朝早く出勤し帰りは決して早くない、食事も外で済ませてくる事も有る。仕方がない事だとは理解していている。でも寂しいという感情までは抑えられない。そんな私にとって寝室でのこの一時だけは夫を独り占め出来る時間だ。私にとっては何物にも代えられない至福の時間。

夫の胸から鼓動がトクトクと聞こえた。間違いなく夫は此処にいる。そう確信出来る事が本当に嬉しい。
「如何したの? 何か話したい事でも有るの?」
「いいえ、何も」
「本当に?」
気遣ってくれる事が嬉しかった。でもこうして心臓の音を聞いているだけで十分幸せ。そして夫の手が背中を撫でてくれるのがとても嬉しい。

「遠慮はいらないよ、夫婦なんだから」
「でもお疲れでしょう?」
「大丈夫、それほどでもない」
顔を上げて夫を見ると優しい目で私を見ていた。恥ずかしくて直ぐ顔を伏せてしまう。夫は困っているかもしれないと思った。もう何日も同じ様な会話をしている。でも私も困っている。このままで十分幸せ、これ以上望む事など無いのだから。

「……
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ