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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
外伝 マリネッタの物語
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どうやって攫われたのか分かる?」
「お……大人。人間を売って金儲けする大人たちが、子供たちを馬車に連れ込んで……さっきまでそこにいたのを、貴方がっ!!」
「オッケー!それじゃまだ全然間に合うな!!さぁて……しっかり捕まっててよ!!」

 しどろもどろになってしまった言葉から必要な情報を拾ったアズは、そう言うや否やマリネッタをひょいっとアズに抱え――空を飛んだ。腹の底が引っ張られるような、人生初の浮遊感。アズが次々に建物に鎖を引っかけて飛翔しているのだと気付いた時には、既に落ちれば死んでしまうほどの高さに舞い上がっていた。

「へ………き、きゃああああああああああああああッ!?」
「この周辺の馬車は……っと。お?300mくらい先に子供の生命の鼓動を複数感じるな。あれが例の馬車か!!」

 アズは迷いなく遠い場所に鎖を投擲し、馬車に引っかかるや否や凄まじい速度で引っ張る。通常の人間なら絶対に経験することがない、300mの超時間跳躍の後――アズはマリネッタが怪我しないようにしっかり抱きかかえながらズドンッ!!と着地した。

「ってぇ!?いきなり馬車の上に飛び乗ってきたのはどこのバカだ!殺すぞオラァッ!!」
「邪魔する、よっと!」
「え?」

 その一言と共に、啖呵を切った馬車の御者の顔面を鎖が打ち抜いた。馬はアズの姿を見た瞬間に突然大人しくなって勝手に馬車を停止させ、突然の事に馬車内で子供が逃げないように見張っていた3人の冒険者が慌てて外に飛び出す。

「な、何事だぁ!?」
「はーいそこの三人、こっちに注目!!」

 ぱんぱんと手を鳴らした場所上部のアズに気付いた冒険者たちは、その男の正体に気付いて腰を抜かした。触れれば命はないとまで噂される『推定レベル7』の冒険者が、逆光を背に腰掛けていた。

「あ、『告死天使(アズライール)』……」
「な、なんで……」

 あくまで紳士的に、笑顔で、しかし纏う気配は首筋に鎌を添えたように。

「あのさぁ。この馬車の中身全部タダで引き受けたいんだけど、構わないかな?」

 アズラーイル・チェンバレットは、マリネッタがどれだけ必死になっても覆せなかった現実を、力づくで覆した。

「ヒッ……ヒャアアアアアアアッ!!」

 笑顔で「お願い」をしたアズの返事を待たずして、男達は馬車を置いて四方に逃げ出した。
 マリネッタはしばらく呆然としていたが、子供たちの安否が急に不安になって馬車に飛び込む。その中には、縄で縛られながらも必死で助けを求めていたマリネッタの『家族』が、全員無傷で揃っていた。
 子供たちの縄をほどいて、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で抱き着いてくる子供たちの頭を撫でながら自分の顔もぐちゃぐちゃに濡れて。必死になって何度も何度も、子供たちがそこに居る事
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