外伝 マリネッタの物語
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それを理解していない。そんな人物がどれだけお金を得ようとも、得たものを軽く考えるからすぐに使ってしまう。今になって思えば今は亡き父はそれを知っていたのかもしれません。
少女は、彼らを恨んだり憎んだりする気持ちが消えていくのを感じました。
代わりに残ったのは、豊かさを求めることへの虚しさでした。
両親がいた頃は、貧しい事も我慢できました。そこには寂しさがなく、暖かさに満ちていたからです。しかし、それがなくなってしまうと少女は生活が苦しい事ばかりを考えるようになり、ふさぎ込んでしまいました。
少女は、本当はおなかのひもじさよりも、こころのひもじさが辛かったのです。
――貧しくてもいいから、温かい家族が欲しい。
大人たちが盗らぬ狸の皮算用を重ねる姿を背に、少女は家を飛び出して街の闇に消えていきました。
= =
この世の不幸は誰かの所為だと思いたいときは、ある。
攫われてしまった新しい家族の居場所が分かり、彼らが乗った馬車を見つけて助けようともがき、長身の青年にぶつかった所為でその馬車を見失ったとき――私はその男が『告死天使』だと気付いて、思わず足元の石を掴んだ。
こいつが魂を天に連れて行くと言うのなら、この世の運命は全てこいつが動かしているようなものだ。だったら家族が魔物に襲われたのも、姉夫婦に家を乗っ取られたのも、父の死も母の死もあの子たちが攫われたのだって、全部全部……。
そんなものは道理に合わない暴論だとは、その瞬間は思わなかった。ただ、その時に私は「それ」を――この世のすべての理不尽と不合理の集約点としての「悪」を求めて、叫んだ。
「お前が全部いけないんだ!!」
投げ飛ばされた石は、短い彷彿線を描いて『告死天使』のおでこに激突した。
「いたぁっ!?あつつつつ………ひ、人に石を投げつけるのは余程の事がない限りやめた方がいいよ?」
「余程の事よ!!アンタが、アンタがいるせいで……!!」
「おう、この俺……アズライールがいるせいでどうなったの?」
その男は、マリネッタの目線に合わせるように地面に座り込んで、真正面から見つめてきた。
子供の癇癪と相手をしない訳でもなく、見下している訳でもない。その男はどこまでも誠実に、真面目に、マリネッタと向かい合った。
「俺は君から逃げも隠れもしない。もしもその怒りや悲しみを解消する切っ掛けに俺がなれるというのなら、遠慮なく全部言ってくれ」
「……馬鹿にして!!お前が何してくれるって言うんだ!!攫われた私の家族を代わりに取り返してくれるって言うの!?」
「あ、なんだそんなこと……いいよ?」
「え?」
「だからいいよ……って。よし、攫われたんなら急いで取り返さないとね。犯人はどこにいる誰で、
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