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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
外伝 マリネッタの物語
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は二人がやってくれてるし……これもシャカイベンキョーって奴だよ、きっと」

 その日の昼食は、普段の料理よりだいぶ不恰好だったという。



 = =



 雑貨屋に閉じ込められるように暮らしていた少女の元に、ある日女性が訪ねてきました。

 何とその女性は家族の暮らしを滅茶苦茶にした、あの恩知らずな姉夫婦の片割れであるおば。不審に思った少女は自分から彼女の前には現れず、店の人に本心を探らせることにします。すると、相手は開口一番に「血縁の娘を引き取りたい」と言い出したのです。

 これには店の人もとても怪しいと思いました。今まで両親が病気になっても顔一つ見せなかった癖に、何を今更そのようなことを言いだすのだ、と。店の人がそれを率直に問い詰めると、相手は驚くべきことを伝えました。
 なんと、少女の両親が追い出された後に家を乗っ取ったはいいものの、手に入れた地位や名声、お金が既に尽きかけているというのです。所詮は他人から無理矢理奪ったお金と地位です。周囲やお得意先とも最初は上手くやっていたようですが、人徳も才能もある前任と比べて見劣りする商人夫婦から周囲は次第に離れていき、逆転を狙った事業にも失敗してお金を使い切ってしまったと言います。

 そこで、夫婦はあるものに目をつけます。
 それは、両親の部屋にあった金庫です。
 どうしても金庫の暗証番号が分からずに放置していたこの金庫の中には、少女の両親がいざという時の為に残した最後のお金が遺されているのです。姉夫婦は強引にでもこじ開けようとしましたが、その金庫はオラリオで造られた極めて頑丈なもの。未だに開けることが出来ていないと言います。
 そして、両親が死んだ今、金庫の暗証番号を知っているのは少女だけだと考えた相手は、今になって少女を引き取りに来たそうです。

 少女は、思いました。あの二人は許せないが、ついて行って金庫を開けてあげれば少なくとも今ほどひもじい思いはしなくて済むのではないか、と。

 しかし、同時に思います。両親の資産を食いつぶしたあの二人では金庫の金もアッと今に使い潰して結局は貧乏に戻ってしまうだろう、と。

 姉夫婦の方は生活が懸かっているため一歩も引く気はなく、とうとう「預けてくれたら店を援助する」などと出来るかどうかも分からないことを言い出す始末。店も店で、あれほど両親に世話になった癖にかなり心が揺れている様子でした。

 少女はこの人たちについて行っても未来はないと確信します。

 ――両親の遺した大切なものを、この人達はどんどん無くしていく。

 ――彼等は両親の遺したものを受け継いだわけではなく、ただ貰っただけなのだ。
 
 ――何の苦労もせずに貰っただけなのだ。

 お金や道具の重み、人の信頼の重み。この人達は
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