外伝 マリネッタの物語
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雑貨屋の経営は順調でした。
元々は商人出会った二人だし、オラリオは彼女の家の中でも最も遠くの取引先。ここでならあの姉夫婦も手出しが出来ません。家族三人は、貧しくこそなりましたが何とか暮らしていける程度に店を大きくしました。
贅沢は出来なくなりましたが、家より家族と一緒にいられることを大事に思った娘はその生活を受け入れていました。
ところが、子供にひもじい思いをさせまいと働き過ぎた夫はある日に体調を崩し、病床に伏せてしまいます。夫は妻子にこう言い残し、息を引き取りました。
「姉夫婦を恨んではいけないよ。あの二人は確かに悪人かもしれないが、悪人だから恨んでいいという訳ではない。今までの事ではなく、これからの事を考えるんだ」
妻はその言葉に涙しながら頷きました。
しかし、娘は納得が出来ませんでした。
あの姉夫婦が裏切らなければ、こんなにも悲しい想いをしなくて済んだはずなのに――。
数年後、妻は流行り病に伏せて、そのまま還らぬ人になりました。
最期まで娘の身を案じながらの一生でした。
その頃になると店の従業員は家族だけではなく街の人も加わっており、彼らが店を経営することになりました。子供はもう彼等を頼って生きるしかありません。しかし、悲劇の連鎖はさらに続きます。
店を立ち上げた二人の商人は、皮肉にも非常に優秀でした。家がお金持ちになったの店が大きくなったのも、二人の才能あってこそ。残された従業員の商才では利益が殆ど挙げられず、店はあっという間に困窮してしまいました。
娘はこの現状をどうにかしたいと思いましたが、彼女はまだ5歳ほどの子供。どうすることも出来ないまま生活だけが苦しくなっていく日々が続きます。
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アズが定期的に子供たちに勉強を教えに来るのとは別に、最近はリリがよくマリネッタの元にやってくる。街の底辺仲間という意味では割と気の合うリリだが、曲がりなりにも冒険者の彼女がこうして遊びに来るのは余程ヒマしているのだろう。
そう聞いてみると、アズのせいでやることが無くなり猛烈に暇しているそうだ。このままだと溶けてなくなりそうなので遊びに来た、と告げたリリを見た私は、とりあえず子供たちの世話の手伝いをしてもらった。……胸を見比べて「マリ姉よりおっきい!」と言ったちびには片っ端から拳骨喰らわせてやったが。
そんな折、ちびっ子たちの昼ごはん製作を手伝ってくれているリリがこんなことを聞いてきた。
「マリは、いつアズ様に出会ったんですか?」
「あれ、その話まだしてなかったっけ……?」
「されてないです。別にどうしても知りたいって訳じゃないですけど……ほら、マリって単純にアズ様に恩があるっていう事情以上の感情を抱いてるでしょ?」
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