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神様になって世界を裏から操ります、黒幕は精霊です〜箱庭の絶対者〜その1
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 勇者はがんばっているようだな。
 とはいえ、人跡未踏地帯の開拓には苦労しているか。
 ここでテコ入れしないと、壊滅しかねん。
 彼らが善良な人物で助かった。これで、人類精霊監視計画を進められる。


「精霊を使って人類を裏から操るなんて、さすがだわ!」


 よせよせ、まだ始まったばかりだ。
 それに、失敗したといえお前の作った魔王が勇者を呼び寄せたんだ。
 精霊システムのテスターとしてこれ以上の適任者はいないさ。
 いまの状況もおあつらえ向きだしな。


 しかし、ただの高校生だった俺が神様気取りとはなあ。
 ま、箱庭内政は好きだし、かわいい神様のためにもがんばりますか。


「か、かわいいなんて、照れるわ」


 幼女神マジかわいい。俺の仕事? 


 職業:神様
 仕事内容:滅びゆく世界を救うだけの簡単なお仕事です。


「よし、ノームになって勇者と契約してくるわ」
「いってらっしゃい。精霊システム始動の第一歩ね!」


◆ 


【勇者タロウ・スズキ】


 俺は、鈴木太郎、どこにでもいる平凡な男子高校生。
 名前をよくからかわれるが、両親からもらった大事な名前だから気に入っている。
 そして――勇者だった。


 そう勇者『だった』。
 高校の帰りに急に光に包まれたら可愛い王女様の前。
 異世界召喚ってやつだな。
 魔王を倒してくれ。って頼まれたんでほいほい勇者をやったわけさ。
 で、魔王を倒しました。
 途中経過? 割愛するぜ。笑いあり涙ありの一大スペクタクルだった。
 楽しかったなあ……。


 物語だったらさ、魔王を倒してハッピーエンドなわけじゃん。


 ――でも、現実は違った。


 この世界『リ=アース』は、魔法が使える一部のヒューマンの特権階級が富を独占し、圧制をしいていた。
 なにより許せなかったのは、ヒューマンたちが同じ人類であるはずの獣人、エルフやドワーフを亜人と蔑んで奴隷にしていたことだ。
 字面だけじゃ伝わらないだろうが、本当に、本当に酷かったんだ。


 魔王がいる間はまだよかった。
 世界を滅ぼそうとする魔王は、人類共通の敵だったから、団結しようとしかけたんだ。
 けれども、うまくいかなかった。
 なぜかって? そりゃあ、俺がいたからさ。
 人類が団結する前に、勇者様が共通の敵たる魔王を成敗しました。
 いままでと変わらずに差別と貧困が蔓延りましたとさ。


 それだけじゃない。ヒューマンの勇者が魔王を倒したもんだから、ますますヒューマン至上主義が強まったんだ。


 酷すぎる現実を前に、俺は立ち上がった。
 『勇者』という立場を利用して、意識改革をしようとしたんだ。

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