暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
後編
6.カウントダウン
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ライト、けっこう気に入ってくれたみたいだな。

「しかし……ヒャッヒャッヒャッ……ハルがねぇ……」

 川内とビス子が店から出て行った後は、残っているのは球磨を除けば隼鷹だ。その隼鷹が今、いやらしい笑みを浮かべて俺の顔を見ている。ちくしょう。今日の昼は一生の不覚だった……

「いやー。あたしと提督ですらその境地には達してないよ? それなのにもうあたしたちよりナチュラルな関係になってるってのがねぇー。ニヤニヤ」
「だ、だまれ妖怪飲んだくれ女!!」
「いやー、仲よきことは美しきかなってやつだよー。めでたいなぁ〜」

 そう言いながら大口を開けてゲハゲハと笑う隼鷹。ほんっとさ。あの日サシ飲みした妖怪艶女と同一人物だと思えないんですけど……。

「……さーて……そろそろあたしは帰るとするかねー。惚れた男のところにさ」
「おお? 今日はやけに退散が早いな」
「だって……さっきの話を提督に……ブホッ」
「やめてマジで……」
「照れるな照れるなー。まぁいいと思うよー。一緒にいるのが自然ってさ。ヒャッヒャッヒャッ」
「……お前、別に酔っ払ってはないよなぁ?」
「どうだろうねぇ〜いつも通りさ〜。……あー、そうだ」
「ん?」
「そろそろハッキリしときなよ。自覚無しってのは意外と残酷だからね〜」
「? ??」

 隼鷹は立ち上がり、俺に膝枕されて寝転んでいる球磨をまたぐと、その球磨の頭を優しくなでた後、ヒャッヒャッヒャッと軽い笑いを吹き出しながら店を出て行った。その後、外から『さーて。提督〜。あんたの天使の隼鷹さんがこれから帰るよぉお〜』と高らかな声が聞こえてきた。酔っ払ってるなやっぱり……。最後の「自覚無しは残酷」って何だろうねぇ?

 さて……

「クマー……クマー……」

 この妖怪アホ毛女、どうしてくれよう……寝顔を見ると実に気持ちよさそうに寝てやがる……いびきが『クマー……クマー……』って、どんだけ個性の塊なんだこの妖怪オリジナリティ女は……。

「むふー……張り……倒ひて……やるクマ……」

 黙ってればかわいいのに……寝言とはいえ口を開いた途端にこれだ……自然と球磨の頭を撫でている自分が憎い……髪を耳にかけてやる自分がもうイヤだ。

「ん……多摩……」

 球磨が、自身の妹の多摩の名を呼んだ。そして次のセリフは、暁ちゃんが轟沈した時の球磨を、俺に思い出させた。

「行っちゃヤだクマ……大井……キソー……」

 こいつの頭を撫でる俺の手が止まる。

「……あれ……ハル?」
「おう。起こしちゃったか……すまん」
「んや……別にいい……クマ……」
「まだ眠いのか?」
「うん……でも帰らなきゃ……」
「いいよ。そのまま寝とけ」
「いいクマ?」
「いいよ」
「んじゃそうする…
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