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鎮守府の床屋
後編
6.カウントダウン
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「敵の数はどれぐらいだ……分かるか?」

 両肩をわなわなと震わせながら、しかし努めて冷静に、提督さんが川内にそう聞いた。

「わかんない……とにかくたくさん……ビス子が食い止めようとした艦隊だけでも相当だったし、私を止めようとした敵もたくさんいたし……」
「ここからどれぐらいの距離にいた?」
「わかんない……必死だったから……」

 提督さんは、川内の足を見、即座に目を背けた。その後必死に涙をこらえ、川内の肩を抱き、目にかかっていた血を拭ってあげていた。

「川内、俺はお前が命がけで伝えてくれたことをみんなに伝えに行く」
「うん……分かった……ありがとう」
「いや……俺達こそ、お前に感謝する。よく戻ってくれた。よく伝えてくれた」
「……」

 提督さんが俺を見た。俺は無言で頷き、提督さんの代わりに川内を抱き支えてやる。入れ違いに提督さんが川内から離れ、俺の耳元で……

「すまん。最期までついていてやってくれ」

 と言い残し、足早にドックを出て行った。その背中からは怒りと、それ以上の悲しみがにじみ出ていた。

 俺は川内の肩を抱き、球磨と共に手を握ってやった。川内の手は冷たく、すでに力も入ってない状況だった。抱き寄せて分かったのだが、川内の背中は服がボロボロで肌が露出していた。その露出した背中の肌は傷だらけで、肩に回した俺の手にべっとりと血が付いた。いつもの川内から察するに、とても綺麗な肌の背中だったろうに……それが今は見る陰もない。

「いたたた……ニッヒッヒ……球磨……ヤキモチやいたらダメだよ……?」
「その暴言は今回だけ特別に許すクマ。でも治ったら張り倒すクマ」
「うん。……ハル、あとでシャンプーお願いね。夜戦で汚れちゃった」
「任せろ。ついでに今日はがんばったご褒美にカットもやってやる。べっぴんにしてやる」
「ちゃんと足の裏もかいてよ……左足はかゆくないから、今日は右足がいいな……」

 俺と球磨は、川内の左足に目をやった。彼女の左足はもう二度と、主機を装備することは出来なくなっていた。

「……分かった。今日だけは却下しないでかいてやるから。だからちゃんと店に来い」
「……そっか。これが……神……通が……アキツグ……さんに……」
「? 川内?!」
「神通……那珂……あり……が……これ……で……やせ……」

 急に、川内の顔が穏やかになった。静かに両目を閉じ、俺の胸に静かに頬を寄せて、その口元は微笑んですらいた。

「……気が変わったクマ。さっきの暴言ゆるさんクマ」
「……」
「今から折檻するクマ。熱い折檻をするクマ。だから起きるクマ」
「よせ球磨」
「川内ー。起きるクマー。これから折檻するクマよ? イヤなら起きるクマー」

 球磨が川内の血まみれの
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