第五十四話 傷
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れ去られたアベルとビアンカの行方や心に深い傷を負い、防ぎこんでしまったミレイといった問題はあるがそれよりもなお頭を抱える問題があった。
それがレックスとタバサの事だった。2人が王子と王女という事もそうだが、それよりも大きい問題があったのだ。
ゲマによってアベルとビアンカが石にされて連れ去られたあの時、突如2人は大声を上げて泣き出した。なんとか2人を泣きやませようとオジロン達が努力していると、天空の剣が突如レックスの枕元に現れ聖なる光を放った時、2人は泣き止んだ。オジロン達がどうやっても泣きやまなかった2人が、だ。
更にその翌日、メディが2人の様子を見に行くとレックスは笑いながら天空の剣を玩具のように軽々と降っていたのだ。
グランバニア中の兵士はおろか、アベルやピエール、ジョーといった剣の達人をも振るえなかったその剣を、だ。
その事が示しているのはただ一つ。レックスこそが長年パパスが追い求め続けていた天空の勇者だという事だった。それに勇者ではないにしろ、双子の妹であるタバサも何らかの宿命を背負っているには違いない。
「その為王子と王女を教え、育て、導いてくれる者が必要なのですが……。それが出来そうな人物は今のグランバニアにはおりませんし……」
オジロンは頭を抱え、溜息をつきながらもう一度言った。
「どうするべきですかな……」
*
「どうしようか……?」
一方その頃ドリスの部屋では、ドリスとピエール、ジョー、スラりん、ホイミン、ドラキチがなんとかしてミレイを立ち直らせる事が出来ないかと相談していた。
「私達がいくら呼びかけてもミレイは何の反応も返してくれないし……」
「じゃあさ、ヘンリーに来てもらうっていうのはどうだ?」
そうドラキチが提案するが、ピエールはそれを否定した。
「アベル殿、ビアンカ殿、ミレイ殿の状況はヘンリー殿にお伝えしましたが、ヘンリー殿の返事は『とても心配で力になってあげたいがラインハットの立て直しがあるからすぐには無理だ。すまないな』との事でした」
「そうか……」
ドラキチが沈んだ声を出す。
「でも誰かに来てもらうのはいい案だと思うんだけどな……あっ!」
「どうしましたか?スラりん?」
突然大声を上げたスラりんに全員の目線が集中する。
「ヘンリーさんに来てもらうのがダメだったらさ、あの人に来てもらおうよ」
スラりんがその人物の名前を告げると、ピエールはしばらく考え込むような様子をしていたが、頷いた。
「いいでしょう。あの人に来てもらいましょう」
*
「それで、この私を大雨の中こんな遠くまで呼びつけたという事なのね」
不機嫌そうな様子を隠そうともしないで、その人物は言い放った。
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