暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
後編
4.返事をしろ(後)
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る手で提督さんからマイクを奪い取っていた。

「川内ッ!!」
『え……?! ハル?!』
「球磨のことが残念ってどういうことだ川内!!」
『え……ちょっと待って……なんで執務室にハルがいるの?』
「いいから答えろ夜戦女!! 球磨がどうした?! 何があった?!!」
『落ち着いてハル? ね?』
「落ち着けるか!! 今どこにいるんだ!!」
『ドックだけど……』
「ドックだな?!」

 マイクを投げ捨てた俺は、そのまま川内からの無線の続きを聞かず、執務室を飛び出した。提督さんが『落ち着けハル!!!』と俺の背後で言っていたが、どう落ち着けというのか。球磨の身に何があった? あの妖怪夜戦女が夜戦から帰ってくるなり元気がなくなるようなことって何だ?

―― 気を抜いたら即アウトなのが夜戦だクマ

 うるせぇ今はそんなこと思い出させるな。イヤな予感しかしない。ふざけるな妖怪アホ毛女。俺はお前が沈むなんて聞いてないぞ。もし俺の許しなしで沈んだのなら絶対許さん。

 俺は全速力でドックまで走った。足に力が入らず、何度も何度も足がもつれてこけそうになった。力が入らない手はバランスが取れず、何度も何度も身体が手の反動でフラフラした。心臓は変わらず痛いほどの鼓動を繰り返していて、胸はおろか全身の血管が鼓動の度に痛い。

 それでも俺はドックまで走った。あの妖怪アホ毛女に何があった?! なにがあったんだ?!

――もうヤだクマ……ひぐっ……沈むのはヤだクマ……

 お前そう言ったよな?! 沈みたくないって言ってたよな?! なら沈んでないだろうな?!!

 なんとかドックの前に到着した俺は、意を決してドックに続く扉を勢い良く開いた。初めてドックに入ったが、ドックは意外と広く、老朽化が進んではいるが、設備の整った施設だというのが見て取れた。

 そのドックの中央……海へと続く出入口のところに、あいつらがいた。ちょうど傷ついたビス子が先頭にいて、ここからはその背後にいるみんなの姿がよく見えない。

「ゼハー……ゼハー……ハー……球磨ぁぁあ! ……くまぁぁああああ!!!」

 たまらず、息が乱れたまま球磨の名を叫んだ。返事しろ妖怪アホ毛女!! 出撃したときみたいに、俺の声にちゃんと返事しろ!!

「ハル? ドックまで来たの?」

 ビス子が俺に気付いた。すまんが俺が聞きたいのはお前の返事じゃない。

「ビス子!! 球磨はどうした?!! 無事なんだろうな?!! 答えろ!!!」
「え……あの……」
「まごつくな!! 球磨は無事だと言え!! 生きてると言え!! 返事しろ球磨!!!」

 聞かせるな……球磨が沈んだなんて聞きたくない……無事だと答えろビス子……早く返事をしろ!! 球磨!!

「……ただいまだクマ〜」

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