暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
後編
4.返事をしろ(後)
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「提督さんもうれしかっただろうなー。黙っててもにじみ出てるもんな。隼鷹大好きオーラみたいなの」
「ほんっと勘弁してほしい。恥ずかしい」
「その割には顔にやけてるぜ?」
「ハルこそさっさと球磨とくっつきなよ」
「冗談は裂きイカだけにしとけよ隼鷹」
「ヒャッヒャッヒャッ」

 深夜4時を過ぎた頃、隼鷹は眠った。今日は作戦への出撃が控えているみんなの代わりに、一日中索敵に出ていたという話だ。その上こんな時間まで俺に付き合ってくれてたんだ。そら疲れただろう……。眠りこける隼鷹に毛布をかけてやり、書き置きをして店を出る。向かう先は執務室だ。

 執務室の前に到着する。室内は静かだが、部屋に明かりが付いているのは外から見て確認済みだ。俺は少しだけ勇気を振り絞り、ドアをノックした。

「とんとん。提督さん、ハルです」
『おう。こんな夜中にどうした?』
「酔い覚ましに。隼鷹は疲れて寝ちゃったんで」
『そうか。……ちょうど作戦も終わったし、入るか?』
「いいですか?」
『ああ』

 提督さんの許しを得て、執務室のドアを開いて中に入った。中の様子は普段とは少しだけ違い、提督さんの席の前に大きなホワイトボードが立てられ、その前で提督さんはホワイトボードを見つめていた。

「提督さん、お疲れさまです」
「ああおつかれ。……気は紛れたか?」
「おかげさまで」
「ならよかった。……隼鷹は?」
「俺の部屋で寝てます。書き置きを置いといたんで、起きたら来ると思います」
「そうか。気を使ってくれてありがとう」
「いえ、提督さんこそ」

 俺とこんな会話をした後、再び提督さんの視線はホワイトボードに移った。提督さんのクセの強い文字と、近海の地図のような図が描かれている。何に関する記述なのかはよく読み取れないが、何度も描いては消し描いては消しを繰り返した痕跡が残っていた。

「これ、俺が見てもいいんすか?」
「ああ。いいよ」
「作戦、しんどかったですか?」
「……相当にしんどかったな」
「マジですか……」
「とはいえ、なんとか成功はした」
「ならよかったです……」

 不意に、提督さんの机の上に置いてある無線機がピーピーと鳴り出した。提督さんはその音を聞くとすみやかに自分の席に戻り、無線機のマイクを取った。

 ……気のせいだろうか。提督さんの顔が険しい。

『提督……今帰投した……』
「おつかれさん川内」
『うん……』
「そのまま入渠してくれ。みんなにもそう伝えるんだ」
『わかった……』

 なんだこの川内の沈んだ空気は……不快な胸騒ぎが止まらない。足が震える。手から力が抜ける。心臓が痛い。鼓動するだけで痛い。

「球磨のことは残念だった」
『うん……』

 この会話を聞いた直後、俺は震え
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