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鎮守府の床屋
後編
3.返事をしろ(前)
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ないことを思い出した。それを少し残念に思いつつ、自分の居住スペースに戻る。今日は新月。街灯と灯台がなければ、帰り道はとても暗い。

―― 気を抜いたら即アウトなのが夜戦だクマ

 うるせぇ。そんなセリフを今更思い出させるな。あいつらは全員ちゃんと帰ってくるんだ。怪我までは許す。大怪我もまぁ仕方ない。でも轟沈したなんて言ったら許さんからなお前ら。仲間が死ぬのは、もう充分だ。

 灯台のそばまで来た時、海を見た。フル装備の球磨たちが、真っ暗な大海原に向かって探照灯を灯し、出撃していくのが見えた。

「球磨!!」

 聞こえるわけない。届くはずがないのは分かってるけど、なぜか叫ばずにはいられなかった。

「くまぁああああ!!!」

 もう一度、あらん限りの声を絞り出して球磨の名を呼んだ。何かを伝えたかったわけじゃない。何か言いたいことがあったわけでもない。ただ、名前を呼びたかった。そして、出来れば振り返って返事をして欲しかった。

「くまぁぁぁああああああ!!!」
「クマ?」

 こちらに背を向けたまま、球磨のアホ毛が反応したのが見えた。こんなに真っ暗闇だが探照灯の明るさのため、すでに遠くにいる球磨とそのアホ毛の姿がよく見えた。あいつは俺の声が聞こえたのか、それともアホ毛が反応したからなのか、海面の上を滑りながらこっちを振り返り、笑顔で右手をぶんぶんと振っていた。

「ハルぅうううううう!!!」
「くまぁぁあああああ!!!」
「行ってくるクマぁぁぁぁああああ!!!」
「負けんなぁあああああ!!!」
「もちろんだクマぁぁぁぁああああ!!!」
「早く帰ってこいよぉおおおお!!! 朝飯食わずに待ってるからなぁぁああああ!!!」
「了解だクマぁぁぁああああああ!!!」



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