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101番目の舶ィ語
第七話。千夜一夜夢物語A素直な転入生
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いものの。先生達の間ではちょっとした噂になっているからな。こうやって注意を呼びかけているんだ」

「あくまでも気休めだけどな」と四条先生は笑う。
まだこの町で直接的な被害が出ていない現状、注意を呼びかけるくらいしか手のうちようがないのだろう。
『攫われる』と聞いて、俺は何かを思い出しそうになる。
だが、頭の中に霞がかかったかのようにそれが何なのかは思い出せなかった。
夢の世界では記憶とかが曖昧になるのかもしれないな、などと思いつつ、三人の会話に耳を傾ける。

「スナオさんは目立つので、いかにも攫われそうですよね」

「え、そんなことないわよ?? まだ一回も攫われたことないしっ」

「一度でも攫われていたら、それはとっくにアウトだからなあ」

「あ、そっか」

先生のツッコミに頬を赤くするスナオちゃん。
その様子は非常に可愛らしかった。

「それじゃまた明日な、須藤、ミレニアム」

「はい、また明日」

「うん、先生バイバイっ」

廊下を歩いて去っていく四条先生。
その後ろ姿を見送ってから、理亜はスナオちゃんの背に手を当てて帰宅を促そうとする。

「さ、それでは私達も帰りましょう。スナオさんの家の場所によっては、近くまで送れるかもしれませんし」

「あっ! ええと……」

スナオちゃんは視線をうろつかせると、そのまま理亜をじっ、と見つめた。

「ん? どうかしましたか?」

「ううん。わたし、やっぱり一人で帰るよっ」

「え、ですが……」

「わたしは絶対大丈夫! でもね……」

夕焼けに滲む表情をしたスナオちゃんは、どこか寂しそうな空気を出しながら。

「リアは、本当に気をつけてね?」

意味深げに告げると、パタパタと逃げるように走り去ってしまった。

「……スナオさん?」

とても追いかけられる速度でも雰囲気でもなく、残された俺と理亜は途方に暮れる。

「本当に気をつけて、ですか」

その言葉の意味は解らない。
だが、不安を過ぎらせるには充分なものだった。










場面はまた変わり、一人で下校する理亜。

「はふぅ。『もうすぐ』というのはいつなのでしょうか」

アリサに告げられた『死』の予兆。
そして、スナオちゃんに言われた『気をつけて』という言葉。
今まで『死』に対する不安な気持ちなんかを見せなかった理亜だが、やはり独り言を零すくらいには不安を感じていたようだ。
それもそうだよなぁ。クールに振舞っているせいか、そうは見えないが理亜はまだ中学二年の女の子。
『死』に対する耐性などあるはずないのだから。

「気は抜けませんけど、ずっと張り詰めいるのも疲れてしまいますね。はふぅ」

理亜
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