外伝 メイドのお仕事
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配に心臓を掴まれつつあったその時、凜とした声が路地裏に響く。
「そこまでです」
最早体を締め付けられる圧迫感と痛みで悲鳴も上がらない男達の後ろに、何者かも分からない女性の気配。姿も確認できない女性は、男達の混乱をよそに言葉を続ける。
「それ以上は秩序の維持を通り越した唯の拷問です。己が為すべきことをしめやかになさい」
くすくす、と。
その女とは別の女性の妖艶なさえずりが上方から落ちる。
瞬間、今まで無事だった喉に鋭い衝撃が走り、顔が急速に鬱血していく。頭部への血流が急速に減少し、呼吸もままならなくなる中で、『賞金稼ぎ』の一人は視界に光るものがあることに気付く。
それはとても細く、長く、そして上方から伸びる複数の『糸』。
そこに到って、男はやっと自分の身に何が起きているのか気付いた。
(俺達も全く気付けない間に、糸を張って、俺達を縛って………獲物が羽ばたくのを待っていた蜘蛛のように――)
それ以上の思考を巡らすより早く、男達の意識は深い闇に沈んでいった。
男達は気絶しただけのようだった。暫く間を置いて、男達を拘束していた糸が解かれる。
路地裏の影からその様子を見つめていたリュー・リオンは、どこか棘のある口調で虚空へ語りかける。
「まるで暗殺者の所業ですね?『上臈蜘蛛』。成程、我等【アストレア・ファミリア】の轍を踏まないために一切の問答は無用という訳ですか?」
かつて、街中での軽犯罪や腐敗を打倒するために『アストレア・ファミリア』は義に乗っ取った活動を行っていた。だが、表立って正義を謳う彼女たちは、清濁併呑併せ呑むオラリオという街の中では悪い意味で浮いていた。秩序より欲望に忠実な傾向にある神々にとって、彼女たちは邪魔だったのだ。
だから、滅ぼされた。
故に不要な存在は速やかに排除することで自分の存在を悟らせず、『悪を滅する何かがいる』と潜在的に思わせることで活動を抑制する。アストレアの唱えた正義とは違うが、根底的な部分では同じ目的で行われる行為だ。
「悪だからと言ってこのように不要な恐怖と苦痛を与えるのは正直好みませんが……あなた達の方が有用な方法を取っていることは認めましょう。アストレア様の好きな正義を、アストレア様の嫌いな暴力で教える。それが今の街の秩序なのですね」
『くすくす……そないツンケンせんでも、貴方の主神様への当てつけのような事は考えてまへん。これが私のやり方いうだけや。まぁ、主神様が表に顔を出さへんからそう思われてもしゃあない思うけどなぁ?』
通路の上――魔石灯の明かりも届かない影の中に、張られた糸に腰掛ける誰かの足だけが微かに見える。姿は見えないが、足につけた雪踏(せっ
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