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だ11月だというのに、昨日の予報では12月中旬の冷え込みとだとテレビに映った奇麗な身なりをした女性が言っていた。とても軽い口調は、その言葉に全く真実味を帯びていなかったけど、その人が?を言っていなかったのだと、私は今身をもって感じている。
今季一番の寒さの到来と共に、人生で一番の冷たさが私を包み込んでいた。都心からほんの少しだけ離れたこの場所では、今日がたとえ金曜日明けの朝であっても、十分過ぎるくらいの静寂に包まれていた。それを、まだ陽の登らない真っ暗な空が後押ししているようで、煌々と光るコンビニの看板でさえ、その明るさが儚さを帯びているように感じられる。
さっき付けたばかりの手袋は、まだ私の手を暖めてはくれない。それどころか冷え切った手袋が私の熱を奪っていくようで苦しかった。だから私は手袋を付けたままの手をポケットの中に突っ込んで、少しでも外気に触れさせぬように努めていた。それでも冷え切った手が温もりを感じる事はなく、どうしようもないから、自分の吐息で少しでも暖めてあげようと思って、私がポケットから手を出した時に、同じポケットの中に入っていた携帯電話が落ちた。
鬱陶しさを感じながら、その携帯を拾い上げると”新規メール一件”と表示されている。マナーモードにしていたせいか、私はそのメールが受信した事を知らなかった。
"ごめんね"
そう表示された無機質な光を放つ携帯の画面が、私の顔を明るく照らしている。”すぐにメールを送ってくるくらいなら......"と私は思った。
たった一言だけのメールは、なぜだかとても重みを持っていて、心に強くのしかかる。嫌、でもなく、喜び、でもなかったのだけれど、私はそのメールを見た時に、少しだけ後悔の念を感じていた。そんな気持ちを抱えながら、私も一言だけメールを返信する。
あの人は勇気がない。
私は昨日の夜を思い出していた。その日を昨日と呼ぶ事に躊躇いを感じているのは、きっと昨日から今になったこの時までに睡眠をとっていないからかもしれない。それなのに、私は今一切の眠気を感じない。
電車のアナウンスが流れると同時に、電光掲示板が点滅を始めた。その音を聞くと、私の左手は急についさっきまで感じていた温もりを思い出した。あの温もりをもう感じる事はないんだ。私自身に言っているようで、私ではない誰かに言っているようでもあった。
冷たい。
外気の冷たい空気なんかよりも、もっともっと冷たい水の底に沈められてしまったみたいだ。真っ暗闇の水の底で、私と彼は向かい合ったまま距離を置いて、何も言わないまま。彼を迎えに来た電車が、大きな風を纏いながら私と彼を遮った。
これで…本当におしまい。
下り電車は彼を連れ去ってしまうのだから。
■古びた町の本屋
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