暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
後編
1.ひとそれぞれ
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見えた気がした。姉ちゃんがついてるなら、加古は大丈夫だろう。今話した限りだと、比較的落ち着いてるみたいだしな。俺は反射的に、その古鷹の幻に右手を揚げて挨拶をしていた。

 店に戻って一時間ほど経過した夕方頃……

「ハル〜。来たクマ〜」

 予定の時間をだいぶオーバーして球磨が来店した。提督さんからの電話で球磨が無事なのは知っていたが……やはり予定時間を過ぎると少々心配にはなる。まぁ怪我もしてないようで何よりだ。

「閉店寸前だぞー」
「仕方ないクマ。哨戒任務がちょっと伸びたんだクマっ」

 あら珍し。いつもは哨戒任務は時間きっかりに済ませてるから、今日は余計心配だったのに。そんなことを考えながら、球磨の来店に合わせて表のポールサインを止めた。今日はもう客も来ないだろう。後は妖怪アホ毛女の貸し切りだ。

「川内と一緒に暁が轟沈した海域に寄ってたんだクマ」
「あーなるほど。近くを通ったのか」
「クマっ」

 哨戒任務の最中に、川内が暁ちゃんの轟沈地点に寄り道することを提案したらしい。川内はポイントに到着した後、自身の太ももに装備してあった探照灯を外し、それを海に沈めたそうだ。

『暁も夜戦が得意でしょ? これ持って行って使って』

 なんとも夜戦が好きな川内らしい弔い方だと思った。普段は夜になると眠くなってしまう暁ちゃんだが、本来駆逐艦の子たちは夜の戦いが得意なんだそうだ。暁ちゃんも任務で夜戦に出た時などは、川内に負けじと探照灯を照らし、戦場を駆け巡っていたらしい。

 暁ちゃんは、探照灯を装備する必要のない昼の戦闘で轟沈した。夜戦が得意なはずの暁ちゃんが探照灯を持たずに轟沈してしまったことが、川内は気がかりたったんだそうだ。

「でも自分の探照灯を暁ちゃんに渡しちゃったら、自分の分はどうするんだろうなぁ?」
「神通や那珂ちゃんが残した探照灯があるらしいクマ」
「そっか」
「クマっ」

 球磨の頭をシャンプーし、髪を乾かしてやる。ビス子の髪はなんとなく暁ちゃんの髪質に近づいていたが、逆に球磨の髪は、以前に比べて少し痛みが激しくなっていた。といっても毛先だけだし、相変わらずもふもふしているのは変わらないが……。これが本人が無理しているのが原因でなければいいんだけど……。

「耳掃除もー」
「……今日も膝枕か?」
「うん」

 もう毎度のこととはいえ、日中にビス子にからかわれたせいか、少し意識してしまう自分が少々情けない……。だが、こいつが一度言い出したことを撤回するとも思えないし、何より……

「ハル、さっさと準備してこっち来るクマ」
「はいはい」

 おれが葛藤を抱えている間にすでにソファに座って膝枕を待ち構えていた。こうなってしまっては球磨を止めることなぞ誰にもできない。少々呆
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