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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第一話 小伊坂 黒鐘のプロローグ
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 今の俺には、一体何が残っているのだろうか?

 そう思って俺は、失ったものを数える。

 俺が5歳の頃、俺の家族は何者かに襲われた。

 それは魔法と刃物による襲撃。

 父と母はそれの被害で死亡。

 生存できた俺と姉は、しかし姉は昏睡状態から目覚めていない。

 今もなお、病室のベッドの上で酸素マスクや点滴をつけた状態で眠っている。

 色んな医者に相談したが、回答は全員揃って『いつ目覚めるか分からない』だった。

 幸いにも全員揃って命に別条はないとは言ってくれた。

 けど、何年目覚めるか分からないのだから、生きてるのか死んでいるのかすら曖昧な状態にいるのは確かだ。

 だとすれば唯一、俺だけがすぐに退院できて、平穏な生活を送ることが許された。

 俺だけが普通の少年として、平穏な日々を平凡に過ごすことができる。

 ……納得いかなかった。

 なんで俺だけがそれを許されて、父さんや母さん、姉さんまでもがそれを許されないのか?

 理不尽だ。

 たった独りにされて、それが自由だと神様が言うのだとしたら、本当に理不尽だ。

 少なくともこんな現実を俺は望んでなんかいない。

 母さんの料理は美味しいし、父さんの魔法と剣術はカッコイイし、姉さんは優しくて甘やかしてくれる。

 そんな当たり前に恵まれた環境を、たった一晩で全て奪われた。

 許せなかった。

 こんな理不尽を生み出す運命に。

 もし神様がいるのならば、神様を。

 だけど……何より許せないのは、そんな理不尽を目の前にして立ち向かうことができなかった、弱くて醜い俺自身だ――――。
 


*****


 潮風が頬を撫でる。

 雲一つない快晴の中での潮風は、不思議と気持ちを楽にさせる。

 ここ数日、数ヶ月、数年分の疲労感が抜けていく気分だ。

 それは肉体的にじゃなくて、きっと精神的なもの。

「肉体的な回復を勧められてるんだけどな」

 自嘲気味に微笑みながら、周りの景色を見渡す。

 海が広がる海岸沿い。

 砂場がない代わりに防波堤があって、俺はその上に乗って潮風を浴びていた。

 両手を広げたら周りに心配されそうだったのでやめた。

 誰もいない所でのんびりしていると、俺の着ている白主体で作られた制服のズボンの中から女性の声が聴こえる。

《心身ともに、ですよマスター。
 休暇を小学生として過ごすなんて、ある意味贅沢なんですから、しっかりと回復させましょう》

 明るく、しかし丁寧な口調で語るのは俺の持つデバイス/天黒羽(あまのくろはね)

 俺は愛称でアマネと呼んでるデバイスは、一般的なシルバーモデルのタブレット端末の形
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